二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

だいすきだいすき!に!

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

あしたてんきになーれ!




「てーるてーるぼーずー♪てるぼぉずー」
歌いながら、新聞のチラシを丸めているのは、おなじみ折原臨也である。もうほとんどの園児達がお家に帰った時間帯、今日は遅くなるという波江を待っている。
「あーしったてんきにしておくれー♪しないとめだまをちょんぎーるぞー」
「いや、ソレ違うよね臨也君」
新聞チラシを丸めててるてる坊主の中身を作っている臨也に、帝人先生は適確に突っ込んだ。本当なら正臣先生と一緒にばらぐみで待っているべきなのだけれど、臨也は駄々をこねていつも帝人先生にくっついているので、最早あきらめている。
「なに?なにがちがうの?」
きょとんと目を瞬かせた臨也は、首をかしげてうーん、とうなったあと、ぱっと表情を明るくした。
「わかった!めだまはちょんぎるんじゃなくてえぐるんだよね!」
「いや、そこじゃないですよ!そしてそんな天使の笑顔で物騒なこと言っちゃだめ!」
「てんし?おれてんし?みかどくんってばてれるじゃないか!」
きゃーっと頬を染める幼稚園児に、帝人先生は深々とため息をついた。
そういう問題ではない。
「だからですね、てるてる坊主の歌に、そんな歌詞はないですよ」
冷静に帝人先生が指摘する。むしろそんな物騒な歌であってたまるか。運動会のとき鉢巻を縫うのに使った白い布地の、あまりの切れ端にチラシを丸めたものを詰め込みながら、臨也はそうだっけ?ともう一度首をかしげた。
「なみえがうたってくれたのこんなかんじだったきがするよ?」
「・・・それはきっと波江さんが間違ってます」
「そうなの?でもてるてるぼうずもたしょうおどしておいたほうがいうこときいてがんばるかもよ?」
「平和的にお願いしましょうね臨也君!」
「みかどくんがそういうんなら、それでもいいけど」
小さな手でぎこちなく輪ゴムをとめ、てるてる坊主の形が完成した。布地にクレヨンではうまく顔が描けないので、臨也はマジックを手にとって、しばらく考え込む。
今日は雨で、天気予報は明日からもずっと傘のマークである。
臨也は別に雨が嫌いなわけではないが、週末が雨だと帝人先生が少し悲しそうにする。恋人思いの臨也としては、そんな顔の帝人先生を放っては置けない。


きっとみかどくんはたいようみたいなひとだからおてんきがすきなんだね、かわいいなあ、かわいいなあかわいいなあ!


なんて思いながら、にこにこ笑顔の顔をてるてる坊主に描き入れる。
まあ実際は、週末が雨だと布団が干せないので、ふかふかの布団が恋しくてちょっぴり切ないだけだったりするのだけれども、その真実をしったとしても臨也はかわいいなあと思ったことだろう。何しろ愛しちゃっているので。
「できたー!てるてるぼうずさん、つるしてー!」
「はい、貸してください」
幼稚園の軒先に、既にいくつかつるされているてるてる坊主の横に、臨也のてるてる坊主をつるして、帝人先生はしとしとと雨を降らす空を見上げた。明日、本当に晴れるといいなあ、と思う。そろそろ梅の花が満開なのでセルティ園長と正臣先生と杏里先生、みんなで少し早い花見でもしたい気分である。
「みかどくん、あしたはれたらうれしい?」
目をキラキラさせて臨也が問うので、そうですね、と帝人先生は微笑んだ。
「臨也君がてるてる坊主さんを作ってくれたから、明日は晴れる気がします」
「おれのあいのちからではれにしてあげる!はれたらおれにおれいのちゅーしてくれるよね!」
「え」
「いいよね?」
きらきらきら。
瞳の輝きが!
尋常じゃないんですが!
帝人先生は冷静に天気予報を思い出して、明日は80%の確率で雨であることを思い出した。オーケイ、流石に80%は覆せないだろう、なんだかんだで不可能なさそうなこの園児にも、流石に。
「そうですねー、天気になったらねー」
「いいんだね!やったあ!ついにねんがんのみかどくんのでれきがとうらいしたね!うれしいなあ、うれしいなあうれしいなあ!」
「いや、晴れたらですよ?」
「はれるよ!」
「・・・どこから来るんですかその自信は」
80%の雨予報だ。
一人の園児の力でどうにかなる問題ではない。多分。しかし臨也は自信満々に、えっへんと胸を張るのだった。


「おてんきうらないははれだったもん!ぜったいにはれるよ!」


お天気占い。靴をぽーんと投げて、あーしたてんきになーれっ!とか言う、あの。
靴が裏返ったら雨、横だったら曇り、上を向いたら晴れと言う、あの。
「かっ・・・」
わいい、といいかけた言葉を飲み込んで帝人はぐっとこらえる。何この子時々めちゃくちゃ可愛いんですけど!と思っても口にしたら図に乗るのでいけない。しかし、だがしかし、真面目にお天気占いをして、晴れが出て喜んで絶対晴れる!とか言っちゃう子供は、そりゃもう、可愛い以外の何者でもない。
帝人先生はうずうずと手のひらを開いては閉じ、我慢できずに臨也の頭を思いっきりなでるのであった。
「ひゃわっ!い、いきなりなにするんだいみかどくん!こころのじゅんびってものが・・・うれしいけど!」
「いえ、なんか、臨也君よい子っ!」
嬉しそうに臨也をなでなでする帝人先生を見上げて、臨也はどきどきする心臓を押さえた。
みかどくんはすごいなあ、と思う。
臨也の胸がきゅーってなるのは帝人先生が触ってくれたときだけだ。心臓がドキドキスキップするのも、ほっぺたがリンゴみたいに真っ赤になるのも。だから、帝人先生は魔法使いみたいだ。
それでこんなに臨也が帝人先生のことを大好きなのも、きっと素敵な魔法なのです。


「あのね、みかどくん、ひみつだけどね。みかどくんにだけおしえてあげるね」


くいくいとエプロンを引いて、臨也はそーっと帝人先生の耳に唇を寄せる。てのひらで隠して。
ほんとにほんと、ないしょのひみつだよ。




「おれね、「きょうはいいてんきですね!」ってわらうきみが、いっとうすきだよ」




だから、明日天気になあれ。

作品名:だいすきだいすき!に! 作家名:夏野