君が愛しいと気づいたから
それを見た俺は咄嗟に手を出して、彼女を寸前のところで支えた。
ルーシィは息を止めていたのか、吐き出して息を荒くしている。
そんな様子にさすがに心配になって、声をかけた。
「…どうしたんだよ?」
「………」
彼女は何も答えなかった。唇を噛んで、言わんとしていた。
それならそれで聞かないことにして俺は彼女のお腹を見た。
傷や怪我をしたとかではないみたいだ。
なら、どうしてルーシィは腹を大事そうに庇ったのか。
他に彼女がお腹を庇う理由があるとしたら、と考えて顔を青褪めた。
「子供できたのか…?」
「っ…」
ルーシィが息をのんだのを見て、予想が当たったことがわかる。
子供…そうか、だからあんなに血相変えて、守ろうとしてたんだな。
それなのに俺…。
「悪い、ルーシィ…俺、」
「い、いいのっ…わかってる、から」
「……なんのことだ?」
ルーシィの様子がさっきよりおかしい。
「もういいの。この子は、私が…」
彼女は何を言っているのか、わからなかった。
それは決して俺が馬鹿だからとかじゃなくて、本当に彼女がわからなかったんだ。
作品名:君が愛しいと気づいたから 作家名:煉@切れ痔