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輪廻の果て2章

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二話





輪廻の輪に組み込まれて、どこにいて、どんな姿で、どういう存在でいるかなんていくら臨也でも分らない。
ただただ、臨也は世界を回った。ぐるぐる回った。
独りの世を愛せれば良かったのに。そうすれば、こんな切ない気持ちになることもなかった。
果てなき地獄。永遠の虚無感。戻ることのない時の輪廻。癒されることのないこの心。それでも求めて止まない相手。

「帝人くん・・・」

赤い満月を見上げながら、たった一人魂の片割れを思う。



数百年、臨也はひたすら回り続けた。妖怪の長であった臨也にとってその数百年は取るに足らない時間だ。
気が付いたらそれくらいの時間が経っていた、と言うだけに過ぎない。
けれど、その長い時間をたった1人で過ごしていた。あの日の、帝人が生きていた記憶を糧に。

「やっぱりおかしいよねぇ・・・」

新宿の一等地に存在するオフィスビル。
そこの大きな窓ガラスを背に臨也は椅子に座りながらディスプレイを見て首を傾げていた。
臨也は今現在情報屋を生業としている。その方が早く帝人を見つけられると踏んだからだ。
それなりに名も上がり、新宿の情報屋と聞けば己の名前が出てくるほど。
そのように有象無象の者達に名を知られるほどに有名にはなってみたが、はやり帝人の情報は得られていない。
そんな臨也は最近池袋に存在しているというダラーズに興味を持っていた。
この長い長い時を生きてきてこれほどまでに興味を駆り立てられた物はない。
どうして、と問われても臨也には答えようがなかった。ただ、渇望している、それだけ。

「なんだろう・・・でも、すっごく気になる」

調べてみれば調べてみるほど、ダラーズとは存在しないチームの様なのだ。架空のハズのチーム。
そのチームを作り上げた創造主はアラブの石油王とか、どこぞのTL関連の社長とか憶測の情報が飛び交っているダラーズのネット掲示板。
それが池袋に存在していて、ある意味の土地伝説になっている。臨也は口の端を上げると、キーボードを打ち始めた。
知らないことがあることが許せない。もしかしたらその知らないことの所為で帝人が見つからないかもしれないから。
臨也はもう二度と過去に犯した後悔は繰り返さないと心に決めている。

(燻りだしてあげるよ、ダラーズの王様)



臨也は黒いコートを羽織り、いつものようにのらりくらりと人の隙間をかいくぐるようにして、雑踏の中を歩いていく。
臨也の情報が正しければ、ダラーズの創造主は学生だった。しかもまだ高校1年。
そんな年若い小僧に踊らされている大人達を滑稽と思いながら、その学生が通るであろう下校路で待ち伏せする。
いったいどうして、こんなにも気になるのだろう。臨也は晴天を見上げながら、不思議だなと呟いた。

(なんだろう、この街に来てからずっと・・・そう、ずっと胸がざわめく。気持ち悪いくらい)

焦りと似ていたが、その感情でもない。胸が締め付けられて、鼓動がドクドクと早くなる。
臨也は自分の手を服の上から胸に置いた。

(なんだこれ・・・・?)

臨也が小首を傾げた瞬間、視界に青い制服を着た学生達が横切る。その時、臨也の中で何かがはじける音がした。


作品名:輪廻の果て2章 作家名:霜月(しー)