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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 1

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 此処にいては危険だ。状況を打開する方法は俺には無い。
 逃げるしかない。
 湖を取り囲むように広がっている森へと走りこむ。

「待てー!」

 チルノが放っている氷柱は、それ程狙いは正確ではないようで、地面や木々を抉っていく。

「チッ」

 舌打ちを一つ。
 今は雪が降り積もる真冬だ。地面に降り積もった雪が、草履を越して直接足に触れる。このままでは凍傷、壊死なんてことも有り得る。
 それだけでなく、地面から生える草で足に幾数多(いくあまた)の切り傷が出来る。

「ふぅ……」

 木陰に隠れ、一息吐く。
 早くなんとかしなければ。
 ばん!と大きな音と共に寄り掛かっている木の幹が抉れる。
 やることはただ一つ

「大人の足を舐めんなよ!」

 走る。兎に角全力で。
 勢いづいて転びそうになりながらも、木に肩をぶつけようがお構いなしにひたすらに、必死に。

 ……どれほど走ったことだろうか。チルノ達の声は聞こえなくなっていた。
 木陰に身を隠し、顔を出してみれば、其処には誰もいなかった。

「はぁー」

 息を吸い、吐く。凍えきり収縮した肺を広げるように。

「……ん?」

 周囲の風景に異変が起きていた。
 周りの木々が、空気が、雪の白ではなく氷の白へと色を変え始めた。
 それに伴う気温の急低下。濡れた服が凍り始め皮膚へと張り付く。周囲には氷の結晶が降り注いでいた。
 ダイヤモンドダスト。こんなところで起き得ない現象が起きていた。

「逃げても無駄よ」

 少女の声が響いた。
 背後から氷柱が襲う。走り、兎に角逃げる。
 何故チルノ達が俺の居場所が解ったか、それが疑問だが。

「ふぐぁ!?」

 突然地面が消えた。
 一瞬の浮遊感と落下感。そして、強い衝撃。
 即座に何が起きたか確認する。背後に高い土壁が有った。恐らく五メートル程の高さだろう。どうやら其処から落ちたようだ。

「レティ、消えちゃったよ」

「よく探しなさい」

 俺を探す声が聞こえる。
 チルノ達は土壁のことを知らないようだ。
 身体に着いた雪を払い、落ちた雪を見て一つの事実に気付く。
 俺が落ちた跡が付いている。
チルノ達は俺の足跡を追ってきたのか。
 チルノ達は土壁に気づいていないようだが、そのうち見つかるだろう。
 時間が有る内に隠れる。それが良いだろう。
 落ちた跡と足跡を消し、茂みに身を隠す。

「着陸!」

 チルノが土壁を降りてきた。
作品名:東方無風伝 1 作家名:国城 龍耶