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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 1

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「……んぁ」
 窓から差し込む陽光の眩しさに目が覚める。
 ふぁ、と欠伸(あくび)を吐きながら腕を上げて大きな伸びをする。
 ぼんやりとした眼差しで辺りを見渡す。
 あぁそうだ。此処は幻想郷だったな。今だ寝ぼけた頭を覚ますように頭を振ってから、身体に掛けられた毛布を取る。
 窓から見る外は晴れ渡っている。
 何時までもアリスの世話になるわけにいかない。
 アリスから人里までの道のりを教えてもらってから、其処を目指すとしよう。
 扉に開ければ其処には狭い廊下。どうやら二階のようで、奥に階段が見える。
 とんとんと階段を降りて行けば、「おや」二人の少女が其処にいた。
 一人はアリス。その手にはティーポッドが握られている。カップに注ごうとしているところだった。
 一人は魔女。白い大きなリボンが巻かれた鍔(つば)の大きなとんがり帽子。綺麗な透き通るような金色の髪。黒の服装に対称的な白色のエプロンを纏っている。その手にはクッキーが握られ、今まさに齧ろうとしているところだった。

「お、なんだアリス。男なんか誑(たら)し込んで」

「あなたが、昨日連れてきたんでしょ!」
 と魔女の少女の言葉を、顔を真っ赤にして大きな声で否定するアリス。

「そうだったか?そう言えば、其処の男くらいの人間の死体を此処まで運んだ気がするな」

「生憎とそれは間違ってるな。それは死体ではなく生きた人間だ」

「あぁ、冬だからと人間の癖に冬眠を試みた人間だったか。そいつは失礼したぜ」

「君のお陰で冬眠から目が覚めてしまったよ。感謝するよ」

「そいつはどうも。なんだったらまた眠りに行くか?」

「そうしたいのは山々だが、もうすっかり眠気が無くなってしまったよ。これじゃ当分は寝れないな」

「なんだったら、私が今すぐ眠らせてやろうか?永遠にな」

「そうしたら、目覚めた時のベッドの温もりを感じられない。あれこそが至福の一時じゃないか?」

「それには同意だぜ。確かに、あのベッドの温もりがあるからこそ、睡眠はまた幸福ってものだぜ」

「愉快な人間だ」

「どういたしまして。その言葉、そっくりそのまま返すぜ」

「どういたしまして」と、彼女らが囲うテーブルに乗せられたクッキーを一枚、齧りながら言う。
 うむ、愉快な会話に美味い菓子。これもまた至福の一時。
作品名:東方無風伝 1 作家名:国城 龍耶