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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 1

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「ま、なにはともあれ座ったらどうだ?立ちっぱなしってのもなんだしな」

「悪いな」

「私は基本、人間には親切だぜ?多分」

「不確定かよ」

 ははっと笑いを零しながら、魔女が引いてくれた席に腰を下ろす。

「おや、そう言えばまだ君の名前を知らなかったな」

「おや、そう言えばまだそっちの名前を知らなかったぜ」

 そう俺の言葉を真似するように言う魔女。
 はいはい、自分から自己紹介しろと言うことですね。

「俺は風間と言う人間だ」

「風間だな。私は霧雨魔理沙。魔理沙と呼んでくれ」

 魔女魔理沙、ね。その名前と容姿、確かに覚えた。

「あぁ、そうだ魔理沙」

「ん?どうかしたのか風間」

 と優雅に紅茶に口付け言う魔理沙。

「感謝する。有難う」

「……へ?」

 目を丸くして言う魔理沙。本当に突然、何故感謝されるか解っていないようだ。

「魔理沙は、倒れていた俺を助けてくれただろう。だからだ」

「あ、あ~あれか。全く、突然言うもんだから何かと思った
ぜ」

「悪いな、わざとだ」

「一杯食わされたぜ」

 得意げに笑いながら、またクッキーを一枚齧る。

「どうぞ、風間」

「有難う、アリス」

 会話に入れず、少し寂しそうにしていたアリスが、漸く入り込むタイミングを見つけたようで俺に紅茶を渡してくる。
 すまんアリス。気付いてはいた。

「これは、からくり人形か?」

 そうアリスに尋ねる。というのも、俺にカップを渡してきたのは、掌に乗れそうな人形だったから。

「違うわよ。自分の意志では動くことのない、ただのお人形よ」

「ならば、何故」

「アリスが操ってるだけだぜ」

 俺の言葉を遮って言う魔理沙。
 操っている?糸で操っていると言うことだろうか。だが、目を凝らして見ても糸は見えない。
 顔を近づけてみても、変わらない。

「いって!」

 顔を近づけたところ、突如人形が眼潰しをしてきた。人形だからそれほど痛くはない。と言っても目は人間の急所。十分痛いわけだが。

「このやろ」

 と人差し指で人形を弾く。

「ちょっと、乱暴はよしてよ」

「おっと、すまないな」

「風間は上海に嫌われているみたいだな」

 ええい、笑いながら言うんじゃない魔理沙。人形に嫌われるなんて、なんだか不憫になってくるではないか。
作品名:東方無風伝 1 作家名:国城 龍耶