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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 1

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「糸なら見えないぜ」

「おや残念。一体どうして?」

「私が、魔力の糸で操ってるの」

 呆れたように言うアリス。
 魔力の糸、だと?魔力と言うことは、彼女が人形を操るのに使っているのは、魔法そのものと言うこと。
 あぁ、なんだそんな簡単なことだったのか。
 この幻想郷は、魔法の世界だったのか。
 それならば、少女が空を飛ぶのも、突如現れた氷柱も、魔女の存在も納得出来る。
 俺が元いた世界では、既に失われた力だ。

「あ、そうだ。風間に聞こうと思ってたことが有ったのを忘れてたぜ」

「なんだい魔理沙。俺に答えら
れることがあれば、質問に答えよう」

「どうして、あんなところで倒れたんだ」

「……ふむ」

 紅茶を一飲みして、ぽつりと言う。

「蜂蜜を頂けるか?」

「どうぞ」

「有難う」

 人形から手渡される蜂蜜の瓶。スプーンで掬(すく)い紅茶に混ぜる。
 そしてまた、一口。

「うん、美味い」

「それは良かったわね」

 とまるで他人事のように言うアリス。まぁ、実際に他人事なのだから仕方がない。こんなことに興味を持たれても困るというもの。

「魔理沙も、このお茶会を楽しんだらどうだ?先程から手をつけていないように見えるが」

「はい、ミルクと砂糖よ」

「お、有難うなアリス」

「どういたしまして」

 カップに渡された砂糖とミルクを入れ紅茶を飲む魔理沙。

「て違う!」

 がちゃん、とティーカップを乱暴にソーサーに置き、魔理沙は叫ぶ。

「そうじゃなくて、風間、質問に答えろ!」

「あ?ああ、美味しいハンバーグの作り方か?俺はソースが決め手だと思うな。長い長い時間を掛けてことこと煮込んだデミグラス」

「違う、なんであんなところで倒れていたか、だぜ」

「あー」

 そうだなぁ、幼い少女に襲われ、逃げたは良いものの、あまりに寒くて凍死しかけた。なんて情けなくて言えるか。

「さっき魔理沙が言っただろう」

「え?なにを」

「冬眠に失敗した」

 はぁ、と溜め息を漏らす魔理沙。呆れているようだ。

「あくまでも答える気は無いってことか。まぁいいぜ。紫だって冬眠はするしな」

「紫?」

 なんだその名前。何処かで聞いたことが有る名前だ。何処だったか解らない。忘れてはならない、大切なものだった気が……。

「チッ」

 舌打ちを一つ。
 駄目だ、どうにも突っかかってはいるが出てはこない。
 一体なんだ、その紫とは。
作品名:東方無風伝 1 作家名:国城 龍耶