東方無風伝 1
「外の世界、とは?」
その言葉に引っかかるものが有ったため聞いてみる。
外の世界に帰るとアリスは言った。俺が居た世界が『外の世界』と呼ばれていたなら、その理由は?
外、つまりはこの世界は、俺が居た世界の中に存在していると言うのだろうか。
「あー、そうだなぁ……うーん」
と歯切れ悪く悩む魔理沙。
「説明は難しいんだよ。霊夢なら出来そうだけど……」
「じゃあ、魔理沙が連れていけばいいじゃない」
「まぁ、そりゃそうだな。と言うわけで風間、霊夢のところに行くぜ」
「誰だそれは」
「紅白だぜ」
「紅白ね」
「紅白か」
赤と白だけのシンプルな二色。それが『霊夢』ねぇ。
なんじゃそりゃ。
「こっちだぜ、風間」
魔理沙は外へと通じているだろう扉を開けて言った。彼女の空いた手にはあの箒が握られていた。
先程箒で送ってくれると言っていたな。
魔理沙に連れられて外に出る。
空は青く晴れ渡っている。陽光に目が眩むくらいだ。陽の光が全身に沁み渡り、身体が温かくなってくる。
白く冷たい雪を感じるよりも、こうして眩しく温かい陽を感じていたかったものだな。
「アリスはどうする、一緒に行くか?」
「私は面倒だからパスするわ」
「そうか。じゃ行ってくるぜ」
「行ってらっしゃい
短い別れの挨拶を交わす魔理沙とアリス。
そうだ俺も言わなければな。
「世話になったな、アリス。感謝するよ」
「良いのよ。困った時はお互い様よ」
「意外だな。冷たく言い返されると思っていたが、案外素直なんだな」
「な!?」
顔を真っ赤にしてたじろぐアリス。
アリスは一見冷たいように見えるが、実際はその逆だ。彼女の口調がそう思わせるだけで、優しい素直な娘だ。
「挨拶は済んだか?」
「ああ。待たせたな」
へらへらと笑う魔理沙にそう返事をする。
その笑みを見ていると、何か嫌な予感しかしない。
「さ、風間。これに掴まれ」
と魔理沙が箒を横に持ち上げて言うので、言われた通りに箒を握る。
「良いか風間。絶対に離すんじゃないぜ」
魔理沙がそう言ってくるので、箒を握る手にはより一層力が籠る。
それを確認して、魔理沙は箒に跨る。
「……何を?」
「飛ぶぜ」
「テレポートとかじゃなくて?」
「なんだそれは」
え、飛ぶの?てっきりテレポートか何かかと思ったが。
それ以前に箒を掴んだまま飛ぶって危ないんじゃ。