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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 1

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「それで魔理沙、そちらの人間は?」


「また外来人だぜ。全く、紫のやつは何をやりたいんだか」

「お、またか。あんたも大変だねぇ」

「ああ大変だった。もう何度も死にかけたよ。此処に来るまでもな」

 そう言って魔理沙を見るが、魔理沙は俺と目を合わせようとしない。

「あはは、災難だったねぇ。でも、誤解はしないでよ。幻想郷は今日も明日も昨日も、今までもこれからもずっと平和なままで有り続ける」

 平和、ねぇ。
 それはあくまでこの少女の主観だ。俺の主観では危険溢れる世界だ。何せ、理由は解らないが少女に殺されかけたんだ。
 あんな者がうろついているこの世界を、俺には平和な世界とは言い辛いものがある。

「まぁ、気になさんな。ところであんたの名前は?私は伊吹萃香だお」

「風間と言う。よろしくな、伊吹」

「萃香でいいよ、風間」

「では改めて、よろしく、萃香」

「よろしく」

 と萃香が伸ばす手を握りながら言う。
 その手は少女らしく小さいものだが、何か力強いものを感じた。

「萃香は、随分と立派な角を生やしているな。それはなんだ?」

「おや、鬼を見るのは初めてかい?まぁ、もう幻想郷には殆どいないからねぇ」

 ……鬼とはまたはた懐かしいな。彼らは気付いたら消えていたが、この幻想郷にも鬼はいたのか。
 鬼を思い出せば、共に蘇る記憶。
 もう古い記憶だから、劣化した映像だが、覚えてはいる。
 彼らが、妖怪が跋扈していたあの時代を。

「懐かしいな……」

「お?」

「いや、なんでもない」

 萃香の言葉からすると、その鬼ももう絶滅しかかっているということか。
 悲しいことだが、それも現実。あの鬼の漢気溢れ、正直に真っ直ぐなところ、気に入っていたのだがなぁ。

「ただーいまー」

 そんなだらけた声が響いたので、振り返ってみれば神社の鳥居を潜ってきた一人の少女がいた。
 紅と白の派手な二色の少女。

「魔理沙、あれが霊夢か?」

「だぜ」

「……噂に違わぬ姿だな」

「だろ」

「何話してんのよ」

 聞こえていたのか、手に持つ大幣を振り上げて言う霊夢。
 随分とまぁ暴力的な少女だ事で。
 とは言うものの、ただの冗談の一環だろう、直ぐに大幣を下ろす。
 そして、俺と目が合えば一言、彼女は言った。

「また、外来人?」

 彼女は、呆れたように、疲れ果てたように溜め息を吐いた。
作品名:東方無風伝 1 作家名:国城 龍耶