東方無風伝 1
「そう、解ったわ」
「それで、霊夢に頼みが有る」
「うちに泊めてほしいなんてのは断るわよ。居座られたら困るわ」
「そうじゃない。ただ、教えて欲しいんだ」
「私が知っている限りなら、答えるわよ」
「この幻想郷と外の世界とやらの関係と、この世界について、教えて欲しい」
「あんた何も知らずに幻想郷に居たいって言うの!」
突然霊夢はそう怒鳴り返してきた。
流石にこの不意打ちには驚きたじろぐ。
「なにか、悪いことでも?」
「……そう、あんたは知らない方の外来人なのね。それでよく幻想郷に住みたいなんて」
「知らない方、とは」
「なんでか幻想郷のことを知ってる外来人がいるのよ。そう言う奴ほど、幻想郷に住みたいって言うわね」
「ほう……」
俺ですら知らなかった幻想郷を、人間が知っていたとはねえ。
なんでだろうな、こんな世界が存在していると人間が知っているならば、俺とて知っているはずだろうに。
「まぁ良いわ。取り敢えずは話
すわよ」
「ああ、頼む」
「この幻想郷はね、その名の通り幻想のモノのために作られた郷なのよ。幻想が生まれ、幻想が死に、幻想が消え、幻想が帰る。此処はそんな世界なのよ」
「幻想?」
「そう、あんた達外の世界に対しての、幻想。あんた達がいた外の世界の非常識が、幻想郷の常識となる。幻想郷と外の世界は、対を成しているのよ」
なんとそんなことが。
だからこの世界では空を飛ぶことも、魔女も吸血鬼も亡霊も宇宙人も存在していると言うのか。
それが表すのは、俺が元居た世界、外の世界にはそれらは存在しないってことか。
「いや……」
それは違う。俺が居た世界には、今も魔女も吸血鬼もその他諸々も、極少数だが存在している。
ならば、俺が元居た世界と、霊夢達の言う外の世界はまた別の世界と言うことになるでは。
「そうとも限らないわよ」
霊夢に聞けば、そうではないと返された。
「ならば、何故」
「そう言う連中は、単に幻想郷の存在を知らない、生まれつき外の世界の連中なのか、または単純に幻想郷より外の世界が好きだって言う奴らよ。居てもおかしくないわ」
「非常識が、常識の世界に居ても」
「別に良いわよ。そんな一人や二人って言うレベルでしょ?そんなことで常識が覆るとでも?」
霊夢の言うことに一理ある。外の世界で魔法や超能力を使っても、それはただの手品と一蹴されて終わりだろう。