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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 1

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 口腔内にも、鼻腔内にも『それ』は侵入し、空気口を塞ぐ。
 ごぼりと肺の中の僅かな空気が押し出され、その場しのぎをするが、無くなった空気の分だけ『それ』は侵入しようとする。
 ばしゃ、と『それ』を叩きつけ上へと向かう。あくまでも感覚的な上だ。本当に上に進んでいるかは解らない。
 兎に角、光が差し込む方へと!

「ぶへぇ!」

 顔だけが漸く脱出に成功し、酸素を求め大きく呼吸する。
 落ち着いたところで、辺りを見回し状況の把握をする。

「みず……うみ?」

 どうやら俺は湖のど真ん中に落ちたようで、広く青い湖にぽつねんと其処にいた。
 何故こんなところ俺が落ちたかは置いといて、湖畔を見つめる。約三十メートルと言ったところか。反対側の湖畔は遥か水平線の先のようで、此処からでは見えない。ど真ん中に落ちた、言ったがそれは誇張表現で、実際はそうではなかったようだ。
 兎に角にも、何時までもこんなところに居ては、何(いず)れは溺死してしまう。
 水分を吸って倍以上に重くなった服を気にしながらも、無理矢理に覚束無い動きで泳ぎだす。
 ……重い。強引に泳いでいるが、傍(はた)から見ればただ溺れているようにしか見えないだろう。 半ば涙目半ばやけくそ半ば死に物狂いで泳いでいれば、漸く畔へと手がついた。三倍以上には体重が増えたんじゃないかと錯覚するような重い身体を引き寄せ、陸地に上がる。
 まるで風呂上がりのようにびっしょりと濡れた身体。最早疲れきって地面に仰向けに倒れこみ休憩する。
 荒い呼吸を繰り返し、落ち着いてきたところで溜め息を一つ。
 疲れた。なんでまたこの世界に来て直ぐにこんな苦労をしなければならないと言うのだ。

「……さむ」

 意地悪にも一陣の風が吹き、この身を冷やす。木々に囲まれたこの湖。その木々を見れば雪が降り積もっている。
 この世界は、俺が元居た世界と同じように今は冬の時期なのか、はたまた常に雪が降り積もる世界なのか……。どっちでも構わんがね。

「あり、人間?」

「あ?」

 声を掛けられ、聞こえてきた方向と思われる上空を見れば、其処には一人の少女がいた。その少女は、背中に透ける綺麗な羽を持った空飛ぶ少女だった。
 俺が元居た世界の人間と近い容姿そしているが、違うのはその羽と、空を飛ぶということだった。
作品名:東方無風伝 1 作家名:国城 龍耶