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こらぼでほすと アッシー9

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「うん、まあ、そこんところはな。ちょっとでも楽しいことがあるといいなってぐらいでさ。・・・・俺らは表立っては手伝えないけど、こっそりいろいろ手伝うから遠慮すんなよ? 」
「感謝する。」
「おう。」
 一番年下の刹那は、これから、まだ戦いのある場所に戻る。本格的に始動するまでは、ちょっとは楽しいことがあればいい、と、シンも願っている。突然に家族を失う痛みをシンも知っているから、世界が変革されることには賛成だ。だが、そのために刹那を失うこともイヤだ。犠牲になんかならなくていい。犠牲の上に成り立つものは、あまりよいものではない。そうならないためになら、自分たち『吉祥富貴』は活動してもいいと、自分で思っている。

 いつもより遅い時間から夕食を食べる。年越しになるから、年越し蕎麦がメインだが、これだけで働き盛りや育ち盛りが満足するわけはないから、山盛りの天麩羅とか買ってきた巻き寿司なんかも並ぶ。その頃に、ロックオンも、かなり楽になったのか、宴会に顔を出していた。
「何も手伝えなくてすいません、アマギさん。」
 トダカーズラブの面々が、それらを用意してくれた。アマギを含めて総勢四名の男たちだ。年末は、家族のあるものは、そちらに帰るように命じられているので、人数はいつもより少ない。それに見知った顔でないのが多い。
「里帰りなんだから、きみは、我侭一杯勝手一杯にしていればいいんだ。・・・こちらの三名は初めてだろ? いつもはオーヴ本国にいるMS乗りたちなんだ。」
 実は、トダカ家での年越しは競争率が高い。家族があろうがなかろうが、トダカーズラブの面々にしてみれば、一緒に過ごしたいイベントだ。だって、トダカと一緒に食事して初詣してお泊りなのだ。こんなおいしいイベントはない。だが、さすがに全員で押しかけるわけにはいかないので抽選になる。今年は部屋が広くなったので、もう少し増やしてもらえるものと思っていたらトダカが可愛がっているロックオンと刹那も戻ることになって以前の定員のままだった。トダカーズラブ年末恒例の抽選会は、悲喜こもごものドラマがあったものの、この三人がゲットした。普段は、本国でMSを操っているメンバーなので、ロックオンたちとは初対面だ。いや、メンバーは顔だけは知っている。三ヶ月に一度発行しているメルマガに、「トダカさんが娘と宣言。」なんていう見出しで一面で報告されていたからだ。
「初めまして、俺はロックオン・ストラトスで、こっちが、刹那・F・セイエイです。」
「そんな堅苦しい挨拶はいいから、座りなさい。」
 ぺこんと刹那共々、頭を下げたら、トダカが手招きして、自分の横に座らせる。
「こちらこそよろしく。三蔵さんのところに普段は住んでいるんだって?」
 ひとりが、まあまあ、と、声をかけてくれる。トダカが認めちゃったら、トダカーズラブのメンバーも認めるしかない。
「はい。」
 以前、トダカと三蔵ができちゃった? という噂がトダカーズラブには広まって、大騒ぎになったことがある。それが払拭されたので、実は大喜びだったりもする。大切なアイドルのトダカさんを奪われてはたまらない。それが、あちらに嫁入りしちゃったと言われているロックオンが、トダカの娘扱いで里帰りしているんだから、三蔵とは、何もないということは証明されたからだ。
「以前ね、私と三蔵さんが交際してるんじゃないかって騒ぎになってね。なにせ、毎日のようにカウンター越しに口説かれるから。」
 酔っ払うと、口説き魔と化すのは、ロックオンも体験しているから、あーと頷く。『吉祥富貴』のスタッフで口説かれていないのは少ない。
「あれは強烈ですからね。」
「あははは・・・あの容姿だから、女性なら勘違いするよ。」
「トダカさん、まあ、一杯。」
 親衛隊のひとりが、トダカのお猪口に、熱燗を注ぐ。その間に、ロックオンは刹那に天麩羅を取り分けて、食べるように勧める。
「刹那に勧めてばかりいないで、ママが食べないと。蕎麦なら喉越しがいいからさ。」
 ちっとも食べていないので、シンが、そこをツッコむ。シンも未成年ではあるのだが、こちらはちょこっとビールを口にしている。正月くらいはいいだろうというトダカのお目こぼしだ。時間を知るためにつけているテレビは、世界各地の年末から年明けを報じている。ただし、ここに映るのは平和な連邦の主要国だけだ。
「熱燗つけましょうか?」
「いや、なくなったら冷やでいく。雨じゃなきゃ、きみにも少し勧めるところなんだが。」
 ロックオンが注ぐ銚子は、トダカのお猪口を満たしてなくなった。まだ、飲みそうな勢いだから、そう言ったらトダカは止める。
「少し飲んでもいいですか? 」
「かまわないが大丈夫か? 」
「近頃、飲んだらすぐに寝ちまうんで、そういう意味では飲んでますよ。」
 寺にいる時は、三蔵の晩酌に付き合って飲んでいる。焼酎の薄いお湯割りをコップに一杯で、前後不覚に寝られるからだ。たまに、何も考えないで眠りたいと思う時は、それを実行している。クスリよりは健康的だ。そういうことなら、と、トダカはお猪口に冷酒を注いでくれた。お返しに、ロックオンも返す。トダカのほうは、すでにコップに切り替わっている。
「来年もよろしく。」
「こちらこそ。」
 ふたりして飲み干して微笑んでいるのは、まさに父と娘といった雰囲気だ。おおっと親衛隊は、飲み食いしていた手を止める。いちゃいちゃではなくほのぼのとしている。なかなかいい癒しだ。
「ママ、俺にも。」
「いいんですか? 」
「お猪口ならいいさ。シン、初詣には参加できるようにセーブしてくれよ? 」
「わかってるよ、父さん。おい、刹那、おまえも飲め。」
 くいっとお猪口を空けて刹那に渡して、それに冷酒を注いだ。刹那も釣られるように、くいっと空けた。うわっと親猫は驚いているが、刹那は、「甘い。」 と、感想を漏らしただけで普通だ。
「強いのかな。これ、結構な度数なんだが。」
 飲みなれていないと、アルコールで噎せたりするものだが、そんな様子もない。
「刹那、もしかして、隠れて飲んでないだろうな? 」
「飲んでない。たまに、キラがカクテルをくれるぐらいだ。」
 まだ未成年だから、と、飲酒は禁じているのに、刹那はそれなりに嗜んでいるらしい。
「トダカさん、私からも。」
 次々とトダカは酌をされているが、はいはいと飲み干していく。ザルなんだと以前に聞いていたが本当にそうらしい。



「おや、やっぱり雪に変りましたね。」
 こちら、ホットプレートでじゅうじゅうと餃子を焼いている寺の居間で、八戒は、そう言って窓の外へ目をやっている。雨音がしなくなって、暗闇の中に白いものが落ちてくるのが、窓からの光りでよく見える。
「寒いと思ったぜ。・・・今夜は凍死しないように温まろうな? ハニー。」
 さすがに満腹した悟浄が、そんなことを言ったら、三蔵がハリセンで即座に張り倒す。
「これぐらいで凍死するような柔な身体でしたか? 悟浄。三蔵、もう食べないんですか? 」
「餃子は飽きた。違うものはないのか? 」
 殴られたことについては誰もがスルーだ。悟空の食べる速度が落ちないので、まだ餃子は焼かなければならないのだが、そろそろ八戒も焼き疲れてきた。