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こらぼでほすと アッシー9

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「もし、プラントが戦火に巻き込まれたら、確実に戻るだろうし、今の体制が継続されなくなっても戻る。俺の国は、あそこだから、あそこが平和でないなら、平和に戻す努力はするさ。イザークやディアッカが、退役してないのも、そのためだと思うぜ。」
 今は穏やかに復興しているから、キラたちの作った『吉祥富貴』に参加している。だが、プラントに異変があれば、そちらを建て直すために動きたいと思っている、と、ハイネも本音を教えてくれた。
「そうなったら、キラたちも動くんじゃないのか? 」
「だが、考え方は異なるかもしれない。俺たちが望むように、キラが動くかどうかによる。下手すりゃ敵同士なんてことになったりしてな。」
「ハイネ。」
「それぐらいのことは覚悟してるさ。一番いいのは、オーナーがプラントを牛耳るってことなんだが、オーナーは、まだ時期じゃないと突っぱねてる。・・・・こちらのことが気懸かりなんだと思う。だから、その問題が解決したら、もう一度提案するつもりだ。」
 プラントを平和裡に安定させていくには、オーナーがトップにいるほうがいい、と、コーディネーターたちは考えている。キラだって、この提案には賛成するだろう。ナチュラルと混ざり合ってしまうと、プラントという国は崩壊する。コーディネーターは婚姻すら、遺伝子情報の合致するもの同士でなければ、子供が生まれないからだ。それを維持しつつ、混ざり合っていくという方向でなければ難しい。それに、未だに残っているナチュラルとの確執も、忘れさせていく必要がある。複雑な問題を含んでいるが、これをひとつずつ解決していくには、オーナーぐらいのカリスマ性が不可欠になる。彼女は、ただの平和の使者ではない。切り捨てる強さもあるし、柔軟な考え方も有している。彼女が先頭に立てば、みな、従うだろうという読みもある。
「それって、ラクスには? 」
「もちろん打診済みだ。今のところは、デュランダル議長が、元の状態に復興させているが、それが終われば新しい指導者に変るほうがいい。・・・一応、あの変態、戦争を引き起こした罪は残ってるからな。けど、まだ時間はかかる。完全に復興させるには、十年仕事だ。オーナーも二十代後半という年齢になって、トップに座るには、いい頃合になる。」
 独立国家として維持していくなら、それなりの象徴は必要だ。次の連邦が確立されて、それが、本当の意味の連邦となれば、こちらでの懸念はなくなる。そうなれば、キラも、プラントでの活動が可能になる。
「先の長い話だな? 」
「だが、プラントって国を維持するなら考えておくべきことだ。キラが、プラントを牛耳るってーのでもいい。その腹が決まるまでは、動かないけどな。」
「そりゃそうだけど、壮大すぎて、俺にはピンと来ない。」
 一国家の維持についての計画なんて大きすぎて、ロックオンにはピンとこない。組織の維持ぐらいの話が限界だ。
「何言ってやがる。おまえさんとこの理念よりは小さいぞ。」
「そうか? 」
「そうだよ。二百年も準備期間があるって、どんだけ壮大なんだよ? それも戦争根絶だぞ? 」
「あははははは・・・そうだよなあ。うちのも壮大だよなあ。でも、俺、実働部隊で、頭で考える担当じゃないから。」
「俺だって、そうだよ。一兵士なんて部品だ。考えるのは、イザークたちに任せるさ。だから、俺は面倒な荷物は作らない。ああ、ロックオンなら歓迎するぜ? 三蔵さんと別れて一緒にプラントへ行こうか?」
「バカも休み休みに言え。俺なんか行っても意味ねぇーよ。」
「まあ、先のことさ。考えといてくれよ、ママ。」
 こいつ、酔ってんしゃないか、と、疑念を抱きつつ、ロックオンは洗い物を始める。ハンドフリーにすれば、携帯端末を横に置いて会話しつつ作業は可能だ。
「何やりだした? 」
 雑音も一緒に届くから、ガチャガチャという音にハイネが反応する。洗い物だ、と、返事しつつ水を流す。
「なんか和むわ。」
「どこが? 」
「生活音ってやつ。ここ、機械音だけだからな。」
「テレビもつけられるだろ? 」
「へっ、どこも平和ですって同じような番組か、年明けのイベントちっくなものしかやってないんだ。もう飽きた。」
「で、俺とくだらない会話してるってか? 」
「そういうこと。」
「寂しい男だなあ。」
「いや、贅沢じゃないか? ラボ貸切だぜ? 」
「何時までなんだ? 」
「決まってない。」
「はあ? 」
「いや、システム自体は動いているけど、異常があれば報せてくれるから、部屋で寝ててもいいんだ。」
「なら、寝ればいいじゃないか。」
「眠くないんだ。」
 ざっと汚れを落として食洗機に食器を放り込む。ぐだぐたの会話は続いていて、部屋に戻っても、まだ続いている。ある意味、どちらも実況中継みたいに、自分たちの行動を報告しているだけだ。
「おまえさんも、部屋に引き取ればどうだ? 俺は、そろそろ寝るぞ。」
「クスリは? 」
「え、あ、はははは・・・まあ、一回くらい忘れてもいいさ。」
「今の録音したからな。せつニャンに報告してやろうか? 」
「やめろよ。」
「なら飲めよ。」
「性質悪いぞ、ハイネ。」
「まず、飲まないおまえが悪いってことを忘れてるぜ。」
 音でわかるからな、と、念を押されて、仕方なくサイドテーブルのクスリを手にする。水と共に含んで、ごくりと喉を鳴らしてみると、よしっとハイネが声を出す。
「お節介だな。」
「ママ限定でな。なんなら、美声も聞かせてやろうか? 俺、歌は得意だぞ。」
「いらねぇーよ。おまえも寝ろよ。」
 即効で効いてくるから飲んだら、ベッドに横になる。いつもより遅い時間まで起きていたから、すぐにうとうとしてくる。
「・・・ごめん・・・寝る。」
「おう、おやすみ。」
 互いに携帯を切って、パチンと端末を閉まったハイネは苦笑する。寂しくないなんて強がりもいいとこだ。なんとなく声が聞きたくなった。日常の音の中で暮らしているロックオンと話すと、ほっとする。

・・・・俺が馴染んでどーする? ・・・・

 そう自嘲して、目の前のパネルに目をやる。世界は、今のところ静かだ。いかに独立治安維持部隊といえ、この時期は活動は控えている。だが、明日から、どうなるかなんてわからない。過激な活動は、すぐに再開されるだろう。
「せつニャンたちが敵対すりゃ、こんな暇もなくなるだろうなあ。」
 時刻を確認すると、ハイネも立ち上がる。異常があれば、携帯端末がけたたましい音を発するように登録してある。まだまだ、先は長い。休める時は休むのが鉄則だ。
 ラボの廊下を歩きながら、ひとりで声を立てて笑う。天上人は、紛争を鎮めるために武力介入を行なう。例えば、プラントで、今の体制から新しい体制に移行する時、それは引き起こされる可能性がある。そうなったら、刹那たちはやってくるだろう。
「俺は、それでも戦えるけどさ。・・・・おまえさんは無理なんだろうな。」