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こらぼでほすと アッシー10

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 生きてるか? と、三蔵が、茫然とした女房の両肩を揺すっていると、パチパチと拍手なんかが起こる。
「よっっ、真打っっ。」
「さすが、最後のおいしいところは旦那様なんですねぇー。」
 悟浄と八戒の掛け声で、全員が大爆笑なんてことになる。これでは、カガリの誤解はまったく解けないだろう。
 
 大騒ぎの後で、次の客が来て、場は静まった。カウンターのスツールに腰掛けて、気付けのカクテルをトダカが、ロックオンに差し出す。
「とりあえず飲みなさい。」
「・・はい・・・びっくりした・・・」
 新年のバカ騒ぎは、スタッフには例年通りだが、ロックオンは知らなかった。だから、びっくりしたのだ。隣には、心配そうな黒子猫が、びとっとくっついている。
「毎年、カガリ様が、ああいう騒ぎをやられるんだ。だから、本気にしなくていいからね、ロックオン。」
 毎年、こういうオープニングなので、誰もが、それにノリノリだ。すでに、カガリは個室に引き上げて、そちらで騒いでいる。キラたちも引き連れて行ったので、ホールは静かだ。
 新しい客は、三蔵の客で、坊主と悟空は、そちらの席にいる。八戒は予約の客が来たので、施術室だし、悟浄も、そちらのフォローについていった。残っているのは、虎とアスランぐらいだ。
「驚かせて悪かったな? ママ。まあ、余興というか、いきなりのお化けというか、そういうものだ。」
 その虎が、横のスツールに腰掛ける。こちらも、着物だ。恰幅がいいから、よく似合っている。
「・・・すいません・・・説明してもらってたら大丈夫だと思います。」
「それだとおもしろくないだろ? ちび、すっかり着崩したな。直してもらってこい。」
「やだっっ。」
 ドタバタと暴れていた刹那の着物は、肌蹴てしまって、かなり着崩れている。これから、刹那を指名しているマリューが来るから、着付けし直してもらえ、と、虎は言うのだが、黒子猫は動かない。なんとかしろ、と、視線で親猫に命じる。
「刹那、マリューさんが来るから、ちゃんと直してもらって来い。俺は、ここにいるから。」
「ママは、私が守っているから大丈夫だよ、刹那君。」
 親猫とトダカに言われると、刹那は、ぷうと膨れっ面で、バックヤードへ戻って行った。
「やれやれ、あれは、ママの言うことしか聞かないな? 」
「そりゃ、虎さん。びっくりさせれば、誰だって・・・」
「はははは・・・おまえの顔も凄かったからなあ。」
「当たり前でしょう? いきなり、あんな・・・俺は、綺麗なお姉さんにされるなら喜びますけど、鷹さんやハイネにされたって気色悪いだけですよ。」
 カクテルをちびっと飲んで、ロックオンが愚痴って、たはーっとカウンターに伏せる。いくらなんでも、男からのキスなんて嬉しくない。むしろ迷惑だ。
「あら、そういうことなら消毒してあげましょうか? ロックオン。」
「あたしもしてやろうか? ママ。」
 すると、背後から声がして、身体を背後に引き起こされて、うちゅーとキスされた。ちょっと前に到着していたマリューと、施術の終わったヒルダだった。
「うわあー。」
「まあ、失礼ね。あなたの理想の女二人なのに。」
「まったくさね。嬉しいだろ? 美女ふたりの歓迎のキス。」
 びっくりして声を上げたら、マリューとヒルダが、ふたりして大笑いしていた。
「・・あ・・・いらっしゃいませ・・・」
 二人の顔を見て、ロックオンも笑う。年上のお姉さまたちからのキスなら、大歓迎だ。
「早かったな? マリュー。」
「ええ、カガリと一緒に出て来られたから。アンディーは参加してなかったわね? 」
「ははは・・・俺までやったら、止めるのがいないだろ。・・・席に案内しよう。」
 スマートに虎は、マリューをエスコートしていく。元々、知り合いだから、これがカップルと言われても、しっくりくる雰囲気だ。そして、ヒルダは、ロックオンの隣に座る。トダカが、すかさず、レモンの浮かんだぺリエを用意する。一応、仕事中だから、アルコールは飲まない。
「慣れなよ? ママ。こんなの日常茶飯事なんだからさ。」
「わかってますけど、いきなり不意打ちだったもんで。・・・ヒルダさんは、ご指名は?」
「今日は、ガードだからしてないんだ。気功波だけはしてもらったんだよ。」
「ヘルベルトさんとマーズさんは? 」
「今日は休みさね。ここなら、帰りも安全だからね。」
 今は、イザークたちも護衛をしているから、帰りは、そちらがやってくれる。行きだけは、ヘルベルトとマーズがガードしていたが、玄関で別れてきた。
「じゃあ、オーナーのほうへ案内しましょうか? 」
「たまには、あたしに付き合いな、ママ。」
「はあ、いいですけど。」
 ちょっと申し述べたいことがあったので、ヒルダがロックオンを引き止めた。歌姫様が、ロックオンも指名しているので、そちらへ出向いて貰わなければならないので、時間はあまりない。
「あんたは、十分に、あたしらの役に立ってる。だから、今のままでいいんだよ、ロックオン。」
「え? 」
「ラクス様は、あんたが気に入ったらしい。あたしらにも、そうおっしゃった。自分のママだから、そのつもりでいて欲しいってさ。」
「ああ、そういうことになったんです。」
 別荘に休暇で滞在した歌姫様は、ヒルダたちが復帰した途端に、そうおっしゃった。自分が、ママに叱られたり叩かれたりしても、阻むな、と、付け足した。それは、危害を加えられているのではなく、親のしつけだから、それでいいとおっしゃったのだ。
「なんかさ、その顔が、とても嬉しそうでね。あたしも嬉しかったんだ。そういうことはあたしらには無理だからね。」
 ただの歌姫というなら、ヒルダだって叱るだろうし説教もできるだろう。だが、ヒルダたちにとって、歌姫様は自分たちが選んだ唯一の主人だ。もちろん、苦言は呈することはある。だが、それには、強制力は無い。ロックオンのように歌姫様に接してしまって馴れ合ったら、護衛はできないからだ。だが、それは気にしていたことだ。特に、同性であるヒルダとしては。それが、異性でありながらできるロックオンには感謝する。馴れ合って甘えてしまえる相手は、誰だって必要だ。その相手ができたのは、嬉しい。
「えーっと、そこまでご大層じゃないんですが? 俺としては、ラクスの愚痴とか聞いてやればいいかな、と。」
「だからさ、そこなんだ。そういうのは、あたしらは、絶対におっしゃらないからね。・・・・よろしく、頼むよ、ママ? 」
「まあ、そういうことぐらいなら。」
 それぐらいしかできません、と、苦笑したら、ヒルダに背中を叩かれた。
「それぐらいが、みんな、できないんだよ。だから、あんたにはしゃんとしててもらわないとね。」
「はあ。」
「あの方に、ただの日常を与えるってーのが難しいことなんだ。そこは任せるから。」
「はい。・・・それじゃあ、ちょっと聞きたいことがあるんですが?」
「なんだい? 」
「ラクスの好物ってなんですか? 」
「ああ、それならね・・・」