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こらぼでほすと アッシー10

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 ヒルダが、その質問に破顔して答えてくれた。それから、好きな色だの、好きな動物だのという話を延々と続ける。ヒルダも、その時、その時の出来事を交ぜつつ、歌姫様の日常について話してくれる。まるで、面談みたいなことになっているが、トダカは耳だけ聞いて、ボトルを磨いている。
「ヒルダさん、片目でMSは辛くないですか? 」
「うちはチームだから、あたしの死角は、ヘルベルトとマーズがフォローしているから、辛くはないよ。それに、あんたと違って、射撃もコンビネーションだしね。」
「ああ、そうか。でも、乗れるってことですよね? 」
「こら、あたしの話を聞いてないのかい? あんたの仕事は、オーナーのママだろ? そっちのことは、あたしらでやるからいらないさ。あんたの仕事とあたしらの仕事は、まったく異質で、どちらも、どちらのことはできないもんだろ?」
「いや、そのうち、俺・・・」
 組織のほうの仕事を・・と、言いかけたら、頭を叩かれた。
「あんたは、うちの人間だ。組織との縁は切れてる。」
「今は、そうですが。・・・身体が治れば、復帰したいんですよ。」
「それは無理だね。ラクス様が、あんたを手放すわけがない。そっちは諦めな。」
「ヒルダさん。」
「治療方法が確立されて、治療されるのに何年かかると思うんだい? それから、復帰するのに再訓練したとして、さらに時間がかかるだろ? その間に、終わってるよ。」
 何が、とは言わない。だが、ロックオンには通じる。それまでに、組織は再始動して、新たなる武力介入をやると言っている。それには間に合わないし、さらなる変革が引き起こされて、組織の介入が終了するだろうと言っている。そう言われてしまうと、ロックオンも返せない。事実、そうなるだろうとは思うからだ。
「適材適所。あんたは、ラクス様のママをやる。あたしらは、ラクス様を守る。そして、うちのMS乗りたちが、あんたの大切な子猫を助ける。みんな、それぞれにやれることをやる。それでいいんだ。」
 トンッと軽くヒルダが、ロックオンの胸を拳で叩く。ロックオンが、ヒルダたちのできないことをやってくれる。それは有り難いし、是非とも、ラクス様の傍にいてやってほしい。これから、さらに状況は厳しくなる。その中で、ほっとできる場所が、キラの傍以外にもあればいい。
「できるだけのことはやらせていただきます。」
 ロックオンのほうも、ニッコリと微笑んで頷いた。言われている意味は、わかる。『吉祥富貴』を実質、率いている歌姫様の気の抜ける場所というなら、確かに自分が適任だろう。
「くくくく・・・いい男だよねぇ。」
「はあ? 」
「三蔵の女房はやめて、あたしの女房をやらないかい? あたしは、大事にするよ? 」
「女房限定なんですか? 」
「だって、あんたを養うのはあたしなんだから、そうだろ。ちょっと出張の多い亭主だけどね。」
 そう言って、ヒルダは大笑いする。ひらひらのエプロンをつけてお見送りしてくれるロックオンを想像してしまった。妙に似合っているのがツボだ。
「ヒルダさん、うちの子をからかわないでください。」
 トダカが、そう言って、こちらも苦笑する。同じものを想像したらしい。想像されているほうは、大笑いする意味がわからなくて困惑中だ。
「ママ、オーナーがお呼び。」
「ヒルダさん、申し訳ありません。」
 シンとレイが、迎えに来た。ああ、引き止めて悪かったね、と、ヒルダも手を振りつつ、まだ笑っている。
「ママ、足元が危ないですから、俺たちに掴って下さい。」
 履きなれない草履で、足元が危ないから、レイが手を差し出す。もちろん、逆側にシンだ。すると、刹那がマリューの席からやってきて、シンのいる右側に、すかさず割り込む。刹那も、草履なのだが、こちらはすでに小器用に動ける程度になっている。
「おまっっ、刹那。」
「あんたの右側は俺だ。」
「けど、おまえ、マリューさんの接待だろ? 」
 刹那は、マリューの接待中だ。席に戻れと叱ったら、マリューのほうがやってきた。
「いいのよ、ロックオン。私も、向こうに合流させてもらうわ。刹那は、ママがいないとダメなのよね?  」
「ああ、おかんを横取りされては困る。」
「誰も盗らないって。・・・・すいません、じゃあ、案内を。シン。」
「はぁーい。マリューさん、お手をどうぞ。」
 あぶれたシンがマリューに手を差し出してエスコートする。ちらりと、マリューは振り返って、ヒルダに声をかける。
「ヒルダ、あなたもいらっしゃいよ。それから、うちの可愛い弟分は、寂しがり屋さんだから、出張ばかりの亭主なんていうのは認められないわ。」
「あんたのお許しが入用なのかい? マリュー。」
「私だけじゃないわよ? キラくんたち年少組のお眼鏡にも叶わないとね。」
「やれやれ、それは大変そうだね。」
 クスクスと、美女ふたりは笑いつつ、VIPルームへ向かう。背後から、ちょっと足元の危ないのが、ゆっくりと従っていく。




 ちょうど、和服でお迎えが終わる頃、エクシアの整備は完了した。今回は、すぐに戻ってくるから、と、黒子猫は、親猫に頼まれた用件を携えて、旅立った。すぐとは言っても、何ヶ月かになるんだろうな、なんて、親猫は内心で思いつつ、送り出した。
 送り出したら、悟空たちは、後期試験期間に突入だ。とはいっても、悟空は、家ではほとんど机に向かうなんてことはない。シンとレイは、店には、一週間に一度か二度は出勤しているが、それ以外は音信不通だ。勉強しろとか、とやかく言うな、と、亭主から言われているから、悟空には何も言えない。毎日、いつものようにお弁当を作って送り出している。
「いいんですか? 」
「いいんだよ。」
「試験のほうは問題ないと思うぜ、ママニャン。キラとアスランが協力してるみたいだからさ。」
 なぜか、間男も、ここのところ居候している。それなりに忙しいから、毎日、居座っているわけではないが、こちらに居る時は、自分のマンションに帰らず、こちらに住んでいる状態だ。
「勉強教えてくれてんのか? ハイネ。」
「まあ、そんなとこだろうな。」
 実際は、試験については、キラが、その問題と解答をネットの海から探り当てて教え、レポートは、アスランが適当なところまで作って、仕上げを悟空にさせているという不正大会だが、教養課程なんてものは、通りさえすればいいということで、ハイネも黙認している。
「それならいいか。」
「そう、そういうことにしとけって。」
「おまえは神経質すぎんだよ。本人がどうにかすりゃいい話だ。」
 女房と間男と亭主は、のんびりと朝の一服なんてことをやっている。ハイネの朝は遅いから、ハイネだけが食後のコーヒーで、残りのふたりはほうじ茶だ。
「これから、ちょっとマンションに帰って、トダカさんとこに寄ってきます。」
「夕方には帰れるのか? 」
「三時までには帰ります。何かありますか? 」
「シバ漬け。」
「ああ、はいはい。」