こうやって過ぎていく街から
消えたくない、消えたくない、消えたくない。
消したくない、消したくない、消したくない。
だからどうか、どうかこのまま。
どうかこのまま、愛のままで、終わりますように。
キスをしたまま、溶けてしまうことができたらよかったのに。
***
「あいつ、元に戻ると思うか」
岐路につきながら、静雄が言った。
新羅は笑って、背の高い友人を見上げる。
「元に戻ってほしいかい?」
「このままのが幸せだろ。誰にとっても」
【そうかなあ】
臨也と帝人を公園に置き去りにして、三人は暗い夜道をとぼとぼと歩く。
【帝人君は、どっちの方がいいんだろう?】
「愚問さセルティ。彼女はどちらでもいいんだよ。まあ今の言い方には語弊があるけどね。それはさ、俺が、セルティに首があってもなくても君を愛するのと同じことなんだよ。どちらでもいいんだ。愛するのに支障はない。僕は君の頭だけが好きなわけでも、体だけが好きなわけでもないんだから」
「じゃあお前、セルティのどこが好きなんだ?」
静雄の言葉に、新羅はふっと笑った。馬鹿なことを訊くなとばかりに。
「魂さ」
作品名:こうやって過ぎていく街から 作家名:すがたみ