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こうやって過ぎていく街から

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 宮城優人が、その名を得たのは四年前の話だ。
 彼は記憶喪失者だった。
 瀕死の重傷を負い、ぼろぞうきんのように道端に転がっていた彼を助けたのが宮城春香と、その父親だ。
 春香は献身的に優人――この時はまだ名前が不明だが――を看病し、奇跡的に一命を取り留めた彼を宮城親子は好意でその家に招き入れ、長期にわたって記憶の戻らない彼のために戸籍を取得し、養子にまでした。春香の父――宮城孝三は企業を経営しており、人一人を養うのはわけのないことだったのだ。
 もちろん、その全てが善意でなされたわけではない。
春香が優人を気に入ってしまったこと、生活の全ての記憶をなくしたわけではない彼が優れた人間であったことが、要因だった。優人は今では、孝三の片腕として彼の会社で働いているのだという。