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こうやって過ぎていく街から

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 宮城春香は、必ずもう一度接触してくるはずだ。優人の方はどうかわからないが、春香は彼を愛している。帝人が言うことをきかないのなら、早いうちに邪魔者を抹消しようと考えるだろう。

 そう、今日にでも――

「情報屋を、あまり舐めてもらっては困りますね」
 邪魔者を、早いうちに消してしまおうと思うのは、何も春香だけではないのだから。

***

【帝人君は大丈夫だろうか……】
「セルティは優しいなあ。もちろん俺は、そんなセルティが大好きだ!」
【それはもうわかった】
「それにしても、四年も全生活史健忘を患うなんて。珍しいなあ」
【四年、か……。なあ、新羅】
「うん?」
 新羅はぽぅっとした顔をしてセルティを見つめる。
【臨也は、どうなったと思う?】
「どうしたんだい、突然」
【いや……そういえば、臨也が消えたのも四年前だったなと思って】
 セルティには頭がない。よって表情がない。それでも、新羅は長年の付き合いかそれとも愛の力なのか、セルティが何を考えているか手に取るようにわかる。
「あいつがもし生きているなら、大人しくしてることなんてできないさ」
【そうだよな。もう、四年だもんな……】
「最初は、帝人君の反応を窺って楽しんでいるのかもと思ったけど、さすがに四年も消えることなんてしないよさすがの臨也でも。珍しく、本気で愛してたみたいだし。まあ多少歪んでたけどね」
【歪んでるのは臨也だけか?】
 新羅はにこりと笑う。
「愛はいつでも、歪んでいるものさセルティ。だからこそ尊いんだ」
【帝人君を見ていると痛々しいんだ。あの子はきっと、臨也が死んだとは思っていない】
「セルティ。もし君なら、僕が黙って消えてしまったら、諦めるかい?」
【諦めない】
 素早く文字を打ったセルティに、新羅は感極まってくぅっと涙ぐむ。
「ああ……セルティ……僕の全て……僕の魂……僕の愛……。僕もそうさ。たとえ君が首を取り戻し、俺のことをすっかり忘れ、誰彼構わず生き血をぶっかけ始めても、僕の愛は変わらない。必ずや再び君のハートを射止めるだろう」
【恥ずかしいことを言うな】
「臨也は死んだ。その確率は100%に近い。でも死体は見つかっていないから、受け入れられないのも仕方のないことだよ。あいつは死んだ。生きているなら、もっと世界は掻き乱れているはずさ」
 新羅は眼鏡を外して涙を拭った。亡き級友を偲んだためでなく、恋人への愛のために流した涙を。
「それこそ、記憶を失いでもしない限り、臨也が大人しく日々を過ごすなんて、ありえない話なんだよ、セルティ」