最愛の人
「ならば、どうして俺を避ける」
「そりゃ、以前と同じじゃいられねーからだろ」
即座に銀時は答えた。
「何事もなかったかのよーに、まえと同じように接しろってか。無理だ」
「……そうか」
どう返事をしたらいいのかわからず、桂はあいまいな相づちを打った。
ふたりとも黙ると、雨音はよりいっそう響いた。
外では相変わらずひどく降っているらしい。
低くうなるような音も聞こえてきた。
雷だ。
「なァ」
銀時が沈黙を破った。
つい顔をあげて、そちらのほうを見ると、強い眼差しとぶつかった。
少し怯む。
それに気づかなかったのか、気づいても無視したのか、銀時は続ける。
「おまえ、俺のこと、どー思ってんだ」
問われて、思考が一瞬止まった。
どう思っているのか。
答えなければならない。
だから、返事を考え始める。
そして、言葉をしぼりだした。
「友人、だと」
声がかすれた。
空気が重い。
外は雨がひどく降っていて、それが無数に叩きつける音が響き渡る納屋の中でふたりきりという状況が、息苦しいほど重く感じられた。
「へえ」
銀時は眼をそらした。少し笑う。自嘲的な、寂しげな笑みだ。
それから、また、眼をこちらのほうに向けた。
揺るがない強い眼差し。
「だが、それじゃ、俺は嫌なんだけど」
そう、きっぱりと告げた。
息が詰まる。
言葉が出てこない。