最愛の人
「銀時!」
厳しい声で言う。
「まだ熱は下がりきってないんだ。今、無茶をすれば、きっと、ぶり返すに違いない。そうなれば、あのふたりは余計に心配する。それがわからないのか」
触れている身体はまだ少し熱い。
銀時は言い返してこない。言い返せないのだろう。
桂は肩の力を少しだけ抜く。
「……なァ、銀時、おまえがあのふたりを護りたい気持ちはわかる。だが、とりあえず今は何事も起こっていないようだし、先回りして心配するのはやめろ」
穏やかに告げた。
すると、銀時が寄りかかってきた。
ほんの一瞬戸惑ったが、桂は退かずにそれを受け止める。
さらに自分の背に銀時の腕がまわされるのを感じた。
少し肉付きがよすぎるほどたくましい腕の中にとらわれているように抱かれている。
身体の熱と鼓動が伝わってくる。
どうなんだろうか、この状態は。
もう自分たちはこういう関係ではないはずだが。
さすがに押しもどすべきではないだろうか。
そう思った。
けれど。
病人だ。
弱っているのだからしかたないと思い、桂はそのままでいた。
夜になり、銀時の熱は平熱まで下がった。
「だからと言って、安心するんじゃないぞ」
「はいはい」
注意したが、銀時の返事は軽かった。
風呂からあがり、しばらくのんびりしたあと、和室に銀時の様子を見にいった。
銀時は布団でおとなしく寝ている。
その近くに座り、その額に触れる。
もう熱くはない。
平熱のままなのだろう。
安堵する。
「……なァ」