最愛の人
眼のまえには布団があった。
とっさに身体を反転させて、防御の態勢を取る。
身体の上には銀時がいた。
見おろしている。
その口が開かれる。
「抱かせてくれ」
どういう意味なのかもちろんわかった。
冗談じゃないと思った。
かつてはたしかにそういう関係だった。
だが、今はそうではない。
「頼む」
頼まれても引き受けられないことはある。
そう思った。
けれど。
桂は銀時を押しのけようとしていた腕をおろした。
我ながら甘すぎると思う。
しかし、自分の上にある銀時の表情を見ていると、あらがい続けることができなくなった。
桂は眼をそらす。
胸の痛みに耐えているような、泣きそうな顔を見ていたくなかった。
銀時が距離を詰めたのを感じる。
のしかかってこられる圧迫感に身を堅くする。
思わず声をあげた。
「銀時」
声も硬くなった。
「俺はおまえ以外の男とはしたことがない」
だから、銀時としていなかった期間がそのまま身体が男を受け入れていなかった期間になる。それはかなり長い期間だ。
「わかってる」
顔の近くで、銀時が言った。
「てゆーか、そうじゃなかったら、俺の気が狂う」
次の瞬間、唇を奪われた。
朝が来たのを感じて、眼をうっすらと開ける。
しかし、まだ眠くて起きる気にはなれない。