最愛の人
瞼が重くて、つい閉じてしまう。このまま眠ってしまいたい。
だが、それでも起きなければならない。
そう思ったとき、隣で銀時が身体を起こす気配がした。
「……朝メシ、作るわ」
「……頼む」
布団から出た銀時は大きなあくびをしたらしく、その声が聞こえてきた。
さらに、だるそうな足音がした。
それを聞きながら、桂は睡魔に引きずりこまれるように眠りについた。
どのぐらいか経って、ふたたび眼が覚めた。
今度は身体を起こして布団から出て、応接間兼居間に向かう。
そこには朝食が用意されていた。
作った者はソファに深々と身を沈めていた。
その朝食をふたりで食べ、それが終わると、後片付けをした。
それから、桂は帰り支度を始めた。
銀時はすっかり元気になったようなので、もう看病の必要はないだろうと判断した。
帰り支度をしているあいだ、銀時はなにも言わなかった。
やがて、あとは荷物を持って外に出るだけという状態になった。
「では、帰る」
ソファに座っている銀時に告げた。
銀時は座ったまま、じっとこちらのほうを見た。
「桂」
「なんだ」
「おまえの家の合鍵がほしい」
眼を見張る。
なぜ合鍵をほしがる。どうするつもりだ。などと聞くのは意味がない。昨夜のことを考えれば、理由は明白だった。
しかし、では、なんと答えればいいのだろうか。
返事に困る。
「それがダメなら、おまえがうちに来い」
「そんなの無理に決まってるだろうが」
やはり身体の関係を持つべきではなかったと後悔しながら、言い返した。
だが、銀時は平然としている。
「じゃあ、やっぱり合鍵だ。俺がおまえの家に通う」
「銀時」