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最愛の人

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 だから、銀時はこの場をどうにか取りつくろえるような適当な文句を考え始めた。
 そのとき、玄関のほうから訪れを告げる声が聞こえてきた。
 その声には聞き覚えがある。瞬時にその顔が頭に浮かび、銀時は少し眼を見張った。
 桂も同じように驚いた様子になり、そのあと、みるみるうちに表情を強張らせていった。
 やがて声の主は家の中に入ってきたらしく、足音が聞こえてきた。
 その足音はだんだん大きくなってくる。
「先生」
 そう呼びかけるとともに、声の主は部屋に入ってきた。
 深野だ。
 部屋には銀時と桂のふたりしかいないのに気づくと、表情を硬くした。
「松陽先生は」
「畑に行った」
 深野の問いに銀時は短く答えた。
 桂はうつむいている。
「そうか」
 納得したように深野は言う。
「わかった」
 そして、深野は踵を返した。
 だが、銀時に背中を向ける少しまえ、視線を走らせ、それを、相変わらずうつむいている桂のほうに向けた。
 ほんの一瞬のことだったが、強い視線だった。
 銀時は口を引き結び、深野をにらみつける。
 しかし、深野は自分がにらまれていることに気づかず、去っていった。
 部屋には重い空気が残った。
 しばらくして、桂が文机のほうに眼をやった。
「……おい」
 沈黙を破った。
「ちっとも進んでないぞ。早く続きを書け」
 えらそうな口調で命じた。けれども、心ここにあらずといった様子で、頭は別のことを考えているようだ。
 銀時は筆を手に取らなかった。
 続きを書く気になんかならない。
「なァ」
 低い声で呼びかける。
 すると、桂がようやくこちらを見た。
「なんだ」
作品名:最愛の人 作家名:hujio