最愛の人
「ヤツに告白されたってほんとうか」
「な」
桂はぎょっとしたように眼を見開いた。
しかし、すぐにその眼を細くし、硬い表情を作る。
「なんのことだ」
「てゆーか、その現場を見たってヤツがいるんだが」
桂は息を呑んだ。
「だれが」
「だれでもいーだろ、別に」
だれが目撃したかなんて今はどうでもいい問題だ。
それを桂もわかっているのか、口を閉ざした。
「それで、断ったんだってな」
「……ああ」
桂は眼を畳にやり、銀時のほうを見ずに重い声で答えた。
「あたりまえだろう」
「だが、ヤツはまだ諦めてなさそうだったぜ?」
そう銀時が指摘すると、桂は眉根を寄せた。長い睫毛が揺れる。
銀時は桂との距離を詰めた。
「さっき、すげェ物欲しそうな眼でテメーのこと見てたぞ」
桂の表情が険しくなる。銀時の言った内容に気を取られてしまっているせいか、すぐそばまで銀時が来ていることに気づいてないようだ。
そんな桂の肩を銀時はつかんだ。
桂が顔をあげた。
その肩を強く押す。
畳へと倒す。
「うわっ……!」
桂が声をあげた。
畳に背中を強く打ちつけられて、顔を痛そうに歪ませている。
それを銀時は無言で見おろす。
桂はキッと表情を厳しくして、銀時をにらんだ。
「なにをするんだ!」
上体を起こそうとした。
それを銀時は畳へと押しもどす。
「銀時!」