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最愛の人

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 非難するように桂は名を呼び、抵抗する。
 その腕をとらえて畳へと抑えつけた。
 見あげてくるその顔を、見おろす。
「おまえが」
 いつのまにか口が動いていた。
「好きだ」
 そう告げた直後、ようやくその感情を自覚した。
 桂が眼を大きく開いた。
 ひどく驚いているようだ。
 銀時の身体の下で、桂は息を呑み、その胸の動きがぴたりと止まった。けれども、少しして、また呼吸を始めて、胸がゆっくりと動き始める。だが、それ以外は動かない。まるで予想していなかった事態に、どうすればいいのかわからず、動けないらしい。
 その身体に、覆いかぶさってゆく。
 桂はハッと眉根を寄せた。
「銀……!」
 おそらく制止しようとして名を呼びかけたその口を、自分のそれでふさぐ。
 初めて触れた。
 想像していたよりも、やわらかい。
 心臓が高鳴った。
 まるで耳の横にあるように、大きな音をたてて強く鳴っている。
 身体がやけに熱い。
 桂が激しく抵抗し、唇が離れる。
 さらに桂は銀時の身体の下から逃れようとする。
 それを、また、つかまえる。
「だれにもやらねェ」
 さっき深野が桂に向けた視線を思いだした。
 胸がむかつく。
「他の男には絶対にやらねェ」
 逃げようとする桂のきものをつかんだ。
 襟だ。
 それを乱暴に押し開く。
 ほんの一瞬まえまではきものの下にあった肌があらわになった。
 その白さが眼に灼きつく。
 こんなことは今までしたことがない。だから手順なんてわからない。ただ、煮えたぎっているような身体の熱の勢いのままに動く。
作品名:最愛の人 作家名:hujio