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最愛の人

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 肌をなでると、桂の身体がビクッと震えた。
 その肩に唇を押しあて、歯を立てる。
 噛んだ。
「い……ッ!」
 桂が顔をひどく歪めて、声をあげる。
 さらに身をよじった。
「放せ!」
 怒鳴り、ますます激しく抵抗する。
「これ以上したら、一生ゆるさない!」
 そう宣告した。
 桂の手は銀時を押しのけようとする。
 銀時は素直に身をひく。
 一生ゆるさない。
 そう言われたら、もうそれ以上のことはできなかった。欲望のままに桂を自分のものにしてしまうつもりでいたのに、身体が動かなくなった。熱が冷めてゆくのを感じる。
 頭が落ち着いてきた。
 けれど、後悔の念は湧いてこない。不思議なことに。
 桂は責めるような厳しい眼差しを向けている。
 だが、さっきまでは逃げようとしていたくせに、そこから動こうとはしない。
 銀時が謝罪するのを待っているかのように。
 しかし、銀時は黙っていた。
 謝る気はまったくない。
 それを察したのか、桂は表情をいっそう険しくした。
 桂は畳を蹴るようにして立ちあがる。
 そして、だらしなく開いたきもののまえを手早く合わせながら、去ってゆく。
 銀時は動かず、桂の荒々しい足音が小さくなってゆくのをただ聞いていた。








作品名:最愛の人 作家名:hujio