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こらぼでほすと アッシー14

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「元気にサラリーマンやってんだってな? 」
「らしいです。・・・刹那、もうちょっと食えるか? 」
 切り分けられたケーキは、一口食べただけで、ロックオンの前に在る。それを、頷いた刹那のほうに押し出した。
「もう一口ぐらいいかがです? せっかく、イザークが用意した一品ですよ? 」
 歌姫様が、もぐもぐと食べつつ、そう言うと、頭に緑のリボンをした黒子猫が、一口切り取って、親猫の口元に差し出した。食えと、黒子猫が睨んでいるので、素直に口にする。

・・・・なんていうか・・・ありえないよなあ・・・・

 それを味わいつつ、親猫は微笑む。あのまま死んでいたはずなのに、こんなに大勢の人間から誕生日を祝ってもらっているというのが、信じられない事態だ。
「人徳ですわよ? ママ。・・・・こういう時に、私たちもお返ししたいと思うほど、ママは、私たちに愛情を注いでくださってるんですから。」
 三年近く、ロックオンは、『吉祥富貴』で暮らしている。その間に、それだけのものを与えていたのだと、歌姫様に言われて苦笑する。
「これといって、何ってことはないんだけどな。」
「でも、今まではなかったものをくださいました。これからも、頂きたいと願っております。」
「はいはい、今まで通り、おかんはやるよ。」
 周囲の花を眺めつつ、親猫はふっと自嘲する。テロリストが花に囲まれて、お祝いされているっていうのが、気分的に妙だ。だが、その花を贈ってくれたのが、同じテロリストなのだ。
「そういや、ティエリアの誕生日って、結局、聞いてないな。刹那、知ってるか? 」
「知らない。」
 ティエリアだけ、守秘義務に拘って、告げてくれなかった。だから、祝いをしたことがないのだ。普通じゃないのはわかっているが、生まれた日はあるはずだ。
「ラクス、おまえさんの情報に、それはないのか? 」
「ございません。ですが、プレゼントを贈ってきたということは、教えてくれるということかもしれませんよ? 」
「今度、降りてきたら聞いてみるよ。」
 たぶん、刹那が旅に出たら、降りてくるだろう。かち合わないようにして、どちらも降りてくるから、梅雨時分にでも降下してくるだろう。その時期だけは、ロックオンも確実に寝込んでいて、精神的に不安定になるから、誰かが傍にいてくれるようになっているらしい。
 はごはごと食べていた黒子猫の紅茶がなくなっているので、注いでやる。頭のリボンは、そろそろ外したほうがいいのかな、と、手を伸ばしたら、ぶんぶんと頭を振って拒絶された。
「今日はつけてる。」
「そうか? 」
「じじいーずっていうより、鷹の悪ノリだな? 」
「まったくだ。」
 キラが、アスランの誕生日に、よくやっているので、みな、この意味は知っている。
「ママが食うとは思えんがな。」
「食いませんよ、俺は。」
「あたしがやったら、その意味だから、よろしくね? ママ。」
「ヒッヒルダさん? それ、拒否権あるんですよね?」
「おや? ストライクど真ん中のあたしを袖にするつもりかい? 贅沢だねぇーママ。」
「やめてやれ、ヒルダ。」
「あんま苛めると、黒子猫が威嚇すんぞ? 」
 マーズとヘルベルトが、そう言うのと同時に、黒子猫がヒルダを睨みつけて、親猫を庇うようにしている。ふぎぃーと吹いているようなイメージだ。
「刹那、大丈夫です。ママの貞操は、ちゃんと私が守りますわ。ほほほほほ・・・確か、マリューさんにも迫られてましたよね? ママ。」
「あれは、からかってんだよ、ラクス。鷹さんといい、マリューさんといい、なんで、俺で遊ぶかねぇー。・・・・刹那、ヒルダさんのも冗談だ。」
「おもしろいからに決まってるだろ? あんたに、その気がないのはわかってるさ。だから、口説きやすいんだ。」
「わかるけど、やめてくださいよ。」
「真面目に反応するから、そうなるんだ。ちょっとは返しておくれよ。ホストなんだからさ。」
「俺は、そんなのできるタイプじゃないんです。そういうのは、ハイネか悟浄さんに頼んでください。」
「あははははは・・・あいつらのは嘘臭くていけないな。情感あるなら、三蔵さんだぜ? ヒルダ。」
 酔っ払って口説き魔と化した三蔵は、すごい。本気だし、いい声だ。トダカが、よく陥ちないな、と、マーズでも感心する。
「あれは怖いよ、マーズ。本気だけど、当人、覚えちゃないんだからさ。・・・ママ、気をつけな。」
「ああ、俺は大丈夫です。悟空が、止めてくれるんで、一回しかやられてません。」
「「「やられた?」」」
 護衛組が口を揃えて叫んだ。
「意味が違う、意味がっっ。口説かれたってだけです。」
「あーびっくりした。ノンケのおまえまで、とうとう陥落されたかと思ったぞ。」
「ヘルベルトさん? 」
「まあ、公認夫夫だから、いいっちゃーいいんだけどな。」
「マーズさんまで? 」
「そうかいそうかい、三蔵が本命かい。なら、あたしは潔く手を引くよ。」
「ヒルダさんっっ。」
「意外と三蔵さんも隅に置けませんね? ほほほほ。」
「ラクスっっ。おまえさんまでっっ。 そういう意味じゃねぇーって言ってんだろーがっっ。」
 ほんと、からかい甲斐があるよねーと、ヒルダが噴出して大笑いする。裏稼業やってて、それなりの経験もあるだろうに、どういうわけか、真面目に返答するのだ、この親猫。それがおかしくて、ついついからかってしまう。
「俺のおかんをからかうなっっ。」
 刹那が、ふぎぃーと叱っているのが、またおかしい。たぶん、黒子猫は意味なんかわかっちゃいない。それでも、庇おうなんてするのだ。
「俺は、あんたの味方だ、ロックオン。なんなら、こいつらを駆逐する。」
「はいはい、ありがとよ、刹那。おまえだけだよ、俺の味方は。」
 よしよしと頭を撫でている親猫に、こらこらとヒルダがツッコミだ。味方だから、というか、からかえるのは、信頼関係が築かれているからだと、黒子猫に説明しておくれ、なんて、真面目におっしゃる。
「だいたい、あたしらが一緒にケーキを食べてるってだけでも、そういうことなんだよ。あたしらは、ラクス様の護衛で、本来なら、外で待機してるんだからさ。」
「え? そうなんですか? 」
「あのな、ママ。普通、護衛は、ガードしてる相手と同じ席なんかには着かないもんなんだ。ラクス様が、命じられた場合は、そうすることもあるが、今回は自主的に参加してる。」
「さすがに、祝いの言葉はないがな。俺らとしても、ママは仲間だって認識なんだ。だから、ここにいるのは、ママのツレという意味だから。」
「そうなんですよ、ママ。ヒルダさんたちは、護衛として、こちらにいらっしゃるわけではありませんの。」
 『吉祥富貴』に参加する仲間として、ここにやってきた。本来なら、全員、顔を出したいところだったが、店のほうがイベントデーだというのと、黒子猫とのんびりさせてやったほうがいいということで、他は辞退したのだ。黒子猫の緑のリボンは、そういう意味のものだ。
「そうでなかったら、トダカさんが来ないわけがないだろ? あの人は、本気で娘だなんて公言してるんだからさ。」
「お父さん、ほんとは、いろいろ贈りたいんだと思うぜ。」
「まあ、明日、なんかあるかもしれない。」