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こらぼでほすと アッシー14

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 なんとなく、トダカの行動が読めている三人は、そう言って笑い出す。どうせ、なんだかんだと理由をつけて、贈り物をするに違いないのだ。シンやレイにも甘い人だが、ロックオンには殊更、甘いのは有名になってきた。どうも、心配らしい。
「トダカさんは、ほんと・・・実の父みたいで・・・嬉しいんですが・・・娘ってとこがね。」
「しゃーないだろ? 三蔵さんが、自分の女房だって公言しちまったんだからさ。あれがなけりゃ、息子だったと思うぜ。」
「いや、ちびたちが、おかんって言うからじゃないか? 」
 ヘルベルトとマーズの軽口なんてものは、なかなか聞けない。普段は、護衛として歌姫様の傍にいるから、世間話なんぞしないからだ。



 翌日、たくさんの花と寺へ戻った。花束は、そのままにしておいたので、寺で活ける花瓶がなくて大騒ぎになったのは言うまでもない。男所帯に、そういうものは配備されていない。
「バケツっていうのが、なんかなあ。せっかく、フェルトたちが贈ってくれたっていうのにさ。なんか、他にないかなあ。」
「まさか、本堂の花立に飾るわけにもいかないぜ? 悟空。」
 俺のは、風呂でバラ風呂にしてくれ、なんて、ハイネは笑っている。花かごは、そのまま飾れるから、ロックオンの部屋に置いたのだが、花束は、バケツに放り込まれている。一応、花束ごとにしてあるが、それでも、なんだか勿体無い。
「これ、店で飾ってくれないか? ハイネ。」
「いや、店のほうもさ、昨日がイベントデーだったから新鮮なのが大量なんだ。」
「ペットボトルの頭を切るとかする? それなら、ちょっとは見栄えがマシじゃね? 」
「おう、それいいな。悟空。」
 大きいペットボトルなら、それが、きちんと納まるぐらいの容量はある。見た目も透明な入れ物というなら、バケツよりは綺麗だ。早速と、大きいペットボトルの空いたのを、頭だけザクザク切って飾ってみた。
「まあいいんじゃない? 」
「じゃあ、これで。本堂にも少し飾ってくれ。」
「はいよ。」
「刹那、三蔵さんと悟空の部屋に運んでくれ。」
「了解した。」
 いくつかのなんちゃって花瓶に入った花は運ばれて配置された。やれやれと最後に、ハイネのものを解こうとしたら、止められた。
「それは風呂。花びらだけだから、そのままにしとけ。」
「勿体無い。せっかく咲いてるのに。」
「いや、そのつもりで開いたものにしたんだ。」
 こうなるだろうという予想の元に、わざと開ききったものを選んでもらった。このまま置いても、一日か二日すれば散ってしまうものだ。それなら、匂いを楽しんでもらうほうがいい、と、ハイネは説明する。
「派手に最後を迎えるっていうのも、花にはいいんじゃないか? 」
「おまえさん、それは嫌味か? 」
 派手に最後を迎えそうになった自覚が、ロックオンにはある。それを指摘しているのかと思った。
「いや、そういうつもりじゃない。リラックスして欲しいってだけ。被害妄想はいけないなあ、ママニャン。」
「・・・悪い・・・」
 誕生日を祝ってもらったことに、かなりの罪悪感があって、どうも思考が迷走しているらしい。ちょっとしたことで、そこに結びついてしまう。謝るロックオンに手を振っていたハイネは、横から蹴りを入れられて、転がった。
「亭主の前で、口説くな。目障りだ。」
 三蔵が、そこにいた。本堂から戻ってきたらしい。ロックオンが、本堂にも花を飾るというので、その準備をしていたから、今までいなかったのだ。
「口説いてないぜ? 今日は、バラ風呂だ。あんたも、せいぜい楽しんでくれよ?」
「けっっ、何がバラ風呂だ。・・・おい、ママ、俺の時は入れるな。」
「はいはい。」
 基本一番風呂の坊主は、そんな甘ったるいものが入った風呂なんて願い下げだ。そんなことをしていたら、トダカがアマギと共にやってきた。なんだか、大荷物だ。
「何事だよ? トダカさん。」
「ああ、うちの娘さんが欲しいものを運んできたんだ。アマギ、それを。」
 アマギが包みを解いた箱は、ホットプレートと書いてある。あ、と、ロックオンは驚く。ちょっとした思い付きで口にしたのに、なぜかトダカが用意してくれたのだ。
「こっちは、ハンドミキサー。それと、バーミックスというジューサーとミキサーの両方に使えるものなんだ。どちらがいいか迷ったので、ふたつとも用意したんだ。きみの父上はね。」
 アマギが取り出す箱には、その名称があって大笑いしている。買っている時の様子を思い出したらしい。
「なんせ、うちは無粋なのしかいないから、お菓子を作るものなんて、全然わからなくてね。・・・これでよかったのかい? 」
 もし違うなら、取り替えてもらうよ? と、トダカは苦笑している。そらそうだろう。仕事一筋だった軍人様が、お菓子の器具なんかに詳しいわけがない。電化製品の量販店で、悩んだだろう姿が、ロックオンにも目に浮かぶ。
「・・・はあ・・・」
「他も、お菓子作りに必要らしいので、一式買ってきた。好きなものを使いなさい。」
 他の袋から、ごろごろと出てくるのは、お菓子作りの機材だ。わからないので、店員に用意してもらったら、こんなことになったのだと言う。
「何? これ? 」
「ケーキの型枠とか、そういうものらしいよ。」
 戻って来た悟空が興味津々で、手にしている。アマギが店員から説明されたことを元に説明しているが、かなりうろ覚えらしい。
「おい、舅さん、やりすぎだろ? これは。」
「はははは・・・嫁ぎ先で入用なものを用意するのが、お里の仕事さ、三蔵さん。」
「あんた、ちょっと浮かれてるだろ? 」
「いいじゃないか。うちの娘さんが、欲しいなんて言うのは、今までなかったんだ。全部、用意してやりたくなるのが、人情ってもんだ。」
 後から虎と鷹に報告されて、些細なことしか思い浮かばないロックオンに、トダカは苦笑してしまった。それも、ほとんどが、自分のためではない。トダカの酒飲み用のグラスなんて言われてしまったら、嬉しくなってしまったのだ。
「トダカさん、これ。すっごくお金かかってるんじゃ・・・」
「大したことはない。それから、ひとつだけ頼みたいんだが、私のコップを選んでくれる時は、是非、四個にしてくれないか? みんなで、一緒に飲みたいんだ。シンにも、そう言っておいてくれ。」
「四個? 」
「なんなら、五個でもいい。シンとレイ、きみと私、そして、刹那君。五個だろ? 」
 ひとりだけではなくて、どうせなら、みんなで飲む時に使いたいと、トダカは言っているのだ。確かに、そのほうがいいだろう。一人で呑むことの多いトダカだから、そう思うのは理解できる。ロックオンは、はい、と、頷いた。
「ありがとうございます。・・・てか、やりすぎですよ? お父さん。」
「まあまあ、滅多にない私の暴走ってことにしてくれ。ははははは。」
「なーなー、トダカさん、このホットプレートを初めて使う時は参加してよ。やっぱ、買った人が使わないと、ダメだろ? 」
「なら、週末にでもやろうか? 悟空くん。」
「うん、お好み焼きとかがいいなあ。一個は、お好みで、一個は焼きソバとかさ。ママ、俺、それがいい。」
「じゃあ、土曜日は、そうしましょう。三蔵さん、それでいいですか? 」