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【APH/東西】奇跡的な仲良し兄弟なので腐向けではない。

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「なーに言ってんだよ。それはお前が失礼な事ばっか言ってるからだろ! 俺以外と話してる時にいつも怒ってるわけじゃねーよ。フェリシアーノちゃん……には怒る事もあるけど、菊なんかだと穏やかに話してるぜ。 ヴェストは理由もなく怒ったりする程小せえ男じゃねーよ」
 俺だって怒られる事もあるしな! とケセケセ笑うギルベルトに、ルートヴィッヒは苦笑するより他ない。わかっているならば、怒られる事のないようにして欲しいものだが、そうもいかないのだろう。それでも怒る気がしないのは、兄の言葉が心地良かったせいだった。悪友と悪ふざけやからかいに興じるような兄であろうとも、やはり兄として弟の事を考えてくれるのだと、自然に表情が穏やかになる。
「このクレープだってマジでうめぇしな! フランシスんとこの菓子もうめぇけど、てめえのとこのはゴテゴテしたもんばっかだから飽きる。ヴェストのはクーヘンもクレープもシンプルだけど飽きねえから毎日でも食えるぜ! この良さがわからねえお前らってマジ気の毒だぜー」
 話題をクレープに戻した兄は、その存在を思い出したように再度皿に手を伸ばす。菓子は基本的に自分が食べたいものを作るが、当然普段それを食べる相手の好みも考慮している。だから兄の感想には耳を傾けるし、それが賛辞なら素直に嬉しい。ダンケ、と自然に紡いだ言葉に、ビッテ、けどいつもうめえもん作って貰ってるこっちこそダンケ、と返され、いや兄さんが喜んでくれるなら俺も嬉しい——そう告げたところで、兄の友人達は引き攣った。
「うわー、なにさりげなくイチャついてるん? さすがに俺も引くわー……」
「……は?」
 溜息混じりの一言に、思わず間の抜けた声が漏れた。兄の方を見遣れば、彼もまた言われた意味を理解出来ないと言わんばかりに、呆気にとられていた。
「待て、今のどこが、その、イチャついているなどと見える? そんな不埒な会話をした覚えはないぞ!」
「だよなぁ。大体さー、料理つーもんは食べる相手の事を考えて作るもんだし、食う時はそういう気持ちに感謝して食うもんだぜ。感謝しようもねえ化学兵器押し付けるヤツならともかく、うまいもん作ってくれた弟へ当たり前に礼言ってるだけでイチャついてるとか、お前らどれだけ不健全なんだよ?」
 兄の言葉は自分の言いたい事を的確に示していて、ルートヴィッヒは頷いた。似ても似つかぬ部分も多々あるが、やはり彼は兄なのだと、ふとした瞬間に思い知らされるのが心地良い。他の兄達から受け継いだものももちろん多いが、自分の成り立ちを考えればこのギルベルトから受け継いだものが本質となるのだろう。
「うん、ギルベルトの言いたい事はよくわかるよ。確かにお互いの事を思いやったり感謝しあったりするのは大事よ。けどそれ、普通は兄弟じゃなくて恋仲の相手とするものじゃないの?」
「……いや、それがわからない」
 声を張り上げるフランシスを、見つめるルートヴィッヒは表情を崩さない。フランシスは何故興奮すると女みたいな言葉遣いになるのか、それも不思議だった。
「本当にな。女のご機嫌取りの事ばっか考えてる奴のことなんかわかんねーよ。相手が肉親だろうが異性だろうが思いやりや感謝は大事だろ? そういうところをおろそかにするから、てめえらは子育て失敗すんだよ」
 やれやれ、と大袈裟に溜息を吐いてみせるギルベルトのてのひらが、髪に触れた。突然の接触にも、しかしルートヴィッヒは身じろぎもしない。
「うちのヴェスト見てみろよ。かっこいい俺様が育てただけあって、素直で可愛いじゃねえか! お前は俺様の自慢の弟だぜ! さすが俺様だよな!」
「……兄さん!」
 ケーセッセッセ! と高笑いする兄に、ルートヴィッヒはむすりと唇を引き結ぶ。ギルベルト、さすがにそれはないわー、ルートヴィッヒも怒ってるやん、とアントーニョがケラケラと笑った。
「気持ちは嬉しいが、そんな事を自慢げに言うな! すぐ調子に乗って自画自賛するのは良くないぞ」
 人には無理は禁物だ、根詰めて限界突破するまで頑張ると隙が生じるなどと言いながら、自分はすぐ調子に乗る癖を改めないギルベルトに、ルートヴィッヒの視線は険しくなる。いつでも冷静に戦況を見極めなければならないというのもまた兄の教えであるにも関わらず、どうして彼はいつもこう調子づきやすいのか。
「え? ちょっと待って、怒るところってそこなの? 可愛いなんて頭撫で回すとかないでしょ、子供ならともかくルートヴィッヒは立派なムキムキなんだし、それに可愛いっていう容姿じゃないだろ!」
 お前ら絶対変! とまくしたてるフランシスこそ何が言いたいのか、ルートヴィッヒにはさっぱり理解が出来なかった。確かに可愛らしい顔立ちではないことはその通りだが、兄の言う「可愛い」は見た目の話であるはずがない。あれでいて兄として弟である自分を重んじてくれたギルベルトの言う「可愛い」は、純粋に兄から見た目線であり、見た目がどうとか可愛げがどうではないのは明白だろう。どうしてこの隣国の男は、それがわからないのだろうか。
「……なんで兄貴に可愛いと言われて怒る必要があるんだ? 確かに子供ではないが、大人になったから俺が兄貴の弟でなくなるわけではないだろう? 弟が可愛くない兄などいないのではないのか?」
「ちょ、え、何それ、何言っちゃってるのルートヴィッヒ?」
 フランシスとアントーニョが顔を見合わせて固まった理由がまったくわからず、思わず兄を見た。さっぱりわからない、と言いたげに首をひねるギルベルトに、自分の認識は間違っていないのだと改めて思い直すが、けれどそれは自国内の話であって、他国は違うのだろうかと思案をはじめた。国内の兄達は皆程度の差こそあれ、末に生まれたルートヴィッヒを祝福し立派に育て上げてくれたものだ。だからこそ今でも、ルートヴィッヒは兄達に可愛がられて来たのだと実感を持っている。けれど他国の兄は弟が可愛くないのだろうか——だからこそ、彼らはあまり仲が良くないのだろうか。
「ったくよー、なんでも女とのことに置き換えるから悪いんだっつーの。俺はヴェストが小せえ頃から育ててんだから、可愛くないわけねーだろ。可愛いって言っても女子供に対するものとは違うぜ。お前らが可愛くねえっていうムキムキで威圧感放っていて生真面目で……強く逞しく男らしく育ったヴェスト、俺の理想通りにかっこ良く育ってくれたヴェストだから可愛いんじゃねーか。女子供の代用品じゃねえ!」
 だん、とテーブルを叩いて力説するギルベルトの言わんとする事は、よくわかる。わかるが、とりあえずテーブルに攻撃をするのはやめて欲しいと思う。今では自分の方が上回っているが、兄は兄で体格も良いし力もある。壊されてしまってはたまらない。
「……………ごめんお兄さんにはお前の気持ちがさっぱりわからない。つまりギルベルトはガチムチ専ってこと?」
「人の兄貴を異常者のように言わないでもらえるか……?」
 じろり、と睨みつければ、フランシスがびくりと硬直する。この男が男女関係ないほど節操のない輩なのは知っているが、ごくあたりまえの兄弟の会話をそっちの方向に持って行かれるのは、何となく気分が悪い。