東方無風伝 2
「ねえ魔理沙」
「なんだ?」
「私、お腹が空いたわ」
「そうか、私にはどうでもいい話だな」
「たまには、がっつり食べたいのよねえ。人間二人くらい」
「私だって魔法遣いだぜ。久しぶりに実験台が見つかったぜ」
二人の会話は全くと言って良い程に噛み合っていない。
しかし、二人の言いたい事は共通している。
それは、今すぐ相手を倒したいと言うもの。
「戦うつもりか?」
「当然。妖怪は退治しておいて損は無いぜ。放っておけばいづれ害が出るかもしれないからな」
「気をつけろよ」
「お、私を心配してくれるのか」
「違う、魔理沙次第では俺にも危害が及ぶからだ」
「そのことは安心しろ。いざとなったら風間を振り落して戦うまでだ」
「それはどっちの意味だ?」
一つは、俺を安全な地面に降ろしてくれるということ。
一つは、邪魔だからそのままの意味で、この高度十メートルの位置から落とすと言う何時もの冗談か。
魔理沙の顔は、先程から真面目なものだ。
それもそうだろう、これから命を賭した戦いが始まるのだから。とても冗談なんて言っていられない。
恐らくは前者なのだろう。
「あなたは、食べてもいい人類?」
「お前は、退治してもいい妖怪?」
それは唐突に始まる。
ルーミアと魔理沙はほぼ同時に弾幕を展開、射出する。
魔理沙の弾幕は、色とりどりの星型の弾幕。博霊神社で見たものと変わらない。
一方のルーミアの弾幕。ルーミアから放たれた紅い弾は正確に此方目掛けて飛んでくる。
正確に狙うのならば、少しだけ軸をずらせばいい。魔理沙は身体一個分横に動きそれを避ける。
次に襲い掛かってくるのは、ルーミアを中心に円状に放たれた青色の弾幕。
しかし弾幕一個一個の隙間が非常に大きく避けやすい。
避けたと思えば、次は魔理沙を的確に狙った尖った弾幕。
今度は魔理沙は大きく動いて避ける。
慣性の法則により、第一射を避けた時の速度が着いたままだから、急に速度を落とすことが出来なかったのだ。
「ぐっ……」
その勢いで、汗ばむ手が滑る。
このままでは落ちるのではないかと少し怖くなる。
そんなことを考えてしまったせいで、脂汗と同時に冷や汗が吹き出る。



