東方無風伝 2
「チッ」
誰かの舌打ちが聞こえた気がした。
恐らくは魔理沙から発せられたものだろう。
どうしたものかと思い、魔理沙を見れば、その鋭い目線はルーミアに注がれている。
釣られてルーミアを見れば、彼女は一枚のカードを手に持っていた。
あれは、スペルカード!
「闇符『ディマーケイション』」
スペルカード宣言が行われ、ルーミアの持つ一枚のカードは光となり、力に変わる。
ルーミアを中心に青、黄、赤色の尖った弾幕が順番に円状に広がる。
弾と弾の間隔は広いが、時計周りと反時計回りに弾幕は回転しながら迫ってくる。
タイミングを見て弾を抜けなければならないのだ。それも、青黄赤と三色を順番に。
「いよっ、と」
短い掛け声と共に軽快に抜けていく魔理沙。
追撃するように、ルーミアからは紅い弾が放たれる。
魔理沙はそれを何の問題も無いように避ける。
魔理沙のそれは、明らかに手慣れた動きだ。彼女はこのような弾幕ごっこに慣れているのだろう。
彼女はルーミアのことを弱いと言っていた。
それはきっと彼女が弾幕ごっこに慣れているから。
今は俺が避けているのではなく、魔理沙が避けている。だから、安心して弾幕を見て分析することが出来る。もし俺が避けると言うことになれば、パニックを起こしてしまい避けきれる自信が無い。
「面倒だ。これで決めるぜ」
魔理沙は独り言のように言う。
そして魔理沙が取り出したのは、手の平に収まるサイズの八角形の道具と、一枚のカード。
「それは……!」
記憶に新しい『あれ』だ。
彼女は、カードを持つ右手をゆっくりと上げて、宣言する。
「恋符『マスタースパーク』」
彼女の左手の道具に力が収束し、増幅、放射される。
それは人一人を飲み込む巨大なレーザー。
「きゃああああ!」
それは突然の出来事で、ルーミアは反応出来なかった。
放たれたレーザーは辺りの弾幕諸共ルーミアを飲み込む。
五秒程レーザーは射出されると、エネルギー切れになったのか、ゆっくりとその光が失われていく。
レーザーが消えれば、ルーミアは力尽きたように地上へと落下していった。
「大丈夫なのか、あれは」
「大丈夫だろ。妖怪だし、大したダメージも無いだろ」
あっけらかんと言う魔理沙。
……まぁ、ルーミアは妖怪だと言うし、きっと大丈夫だろうと信じることにする。



