東方無風伝 2
「そろそろかしら」
何が、と霊夢に尋ねようとしたが、その瞬間にはあの大量の弾幕が消え去っていた。
「ふう、どうだ魔理沙!」
萃香が息を一つ吐いて魔理沙に問う。
その魔理沙は、地面にうつ伏せに倒れている。
「その圧倒的物量は無しだぜ」
「ふふん、負け犬の遠吠えにしかならないよ魔理沙」
「ちく……しょう……」
そう言い残して、がくりと力尽きる魔理沙。
「あれは大丈夫なのか」
「平気よ。弾幕なんて当たっても痛いだけだもの」
「そうか、なら大丈夫そうだな」
萃香と魔理沙の弾幕ごっこのお陰で、すっかりと境内は荒れ果ててしまった。
「これが弾幕ごっこよ。解ったかしら?」
この境内の後始末は誰がやるのだろうなぁと考えていると、そう霊夢が訪ねてきた。
「魔法か何かで相手を倒した方が勝ちってところか」
「大外れよ」
「おや、それじゃ答えを教えてもらっていいかな、霊夢先生」
「出来の悪い生徒ね。少しは自分で考えないと力は身に着かないわよ」
「公式が解ってないからな。公式を理解しなければ力は身につかない」
「あーはいはい。おとなしく教えるから黙ってなさい」
面倒になったのか霊夢は投げやりに返してきた。
これには苦笑いが漏れ出てしまう。
「なに笑ってんのよ」
「いや何も。どうぞ御教授下さい、霊夢先生」
「……魔理沙―」
「なんだ霊夢―」
突然霊夢は会話の相手を魔理沙に変える。
当の魔理沙は、相も変わらず寝転んでいる。
「風間に弾幕ごっこを詳しく教えてあげてー」
「なぬ?霊夢、何故魔理沙に」
「魔理沙は弾幕の専門書を作る程、弾幕ごっこにのめり込んで
いるのよ」
ほう、と短い関心の声とともに、視線を霊夢から魔理沙に変える。
魔理沙は既に立ち上がっており、服に着いた土や雪を払っていた。
「いいぜ、何処から始める?」
「全部よ」
「全部とはまた、難しい注文だ
ぜ」
やれやれと言わんばかりに肩を竦める魔理沙。
「私と萃香の弾幕ごっこを見ていただろ、風間は弾幕ごっこをとういうモノだと思った?」
「魔法で相手を倒すものでは?」
「それは弾幕ではないぜ。ナンセンスだ」
魔理沙は俺の推論を全否定する。
そこまではっきりときっぱりと否定されても、解らないのだから仕方が無いではないか。と言うのはただの言い訳に過ぎない。
だからこそ、こうして学ぼうとしているのだ。