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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 2

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「これ、かな」

 目の前に聳えるのは、まるで急流な川のような、真っ白で幅が広い大階段。
 小町に教えられた白玉楼は、この果てが霞む大階段の先に在るんだそうだ。
 これを上るとなると、気が重くなってくるぜ。なんてことも言っていられない。
 この大階段を上らなければ、俺は他に行くところなんて無いんだ。今更、後が退けない。
 だったらもう、上るしかない。
 いざ鎌倉。と言わんばかりに進みだし、一段めに足を掛ける。

「……ふむ、折角人が心を決めたところで、水を差して、諸君は俺に恨みでもあるのか?」

 振り返る。
 其処には、腹を空かせていると思われる野犬が数匹、俺に殺意を飛ばしていた。
 ひい、ふう、みいと数え、最後の一匹が八。計八匹の野犬が、俺を餌として喰らおうとしているということか。

「まぁ、さ。何事も無く行けるとは思ってなかったけどさ」

 それは居酒屋の一悶着だけだと思っていたよ。

「あー、諸君。俺の食うのは、止めてもらえないかな。俺も抵抗はするから、お互い損するだけだぜ」

 うぉん! と返事をされたが、どうやら俺の意見は却下されたようで、じりじりと野犬は俺を包囲しようとする。

「……どうして、こうも運が悪いんだろうなぁ」

「日頃の行いが悪いからだろ? 特に、居酒屋の件」

「黙ってろ。お前に意見なんざ求めてねぇ」

 やれやれ、と言い残してこの世界の俺は消える。
 とは言ったもの、あいつの言ったことは正しくて。

「なんて言ってる暇ねえよ」

 依然として野犬は俺を取り囲もうとしている。

「兎にも角にも、逃げるしかないだろう」

 背を向け走る! その方向は野犬の群れの逆側。大階段を上ろうとした俺の背中側に野犬の群れがいたから、また引っ繰り返せばそれは大階段の方向。
 つまりは、大階段を必死で上ると言うこと。

「こんなことなら、あんなこと言わなければ良かったなぁ!」

 後悔先に立たずとは、良く言ったもんだ。
 そんな後悔しても、過去を変えられる筈が無くて。
 今は変なことを考えずに、兎に角逃げろ!
作品名:東方無風伝 2 作家名:国城 龍耶