東方無風伝 2
人間に利用されるだけの力を持つことが出来なければ、人間は神を役立たずと罵倒し、利用されるだけの力を持てば、散々利用して『ポイッ』だ。そうして彼等は忘れられ、神として力を失っていく。
だからこそ、霊夢の言う逆のこと、つまりは忘れられずに信仰され続けている武器なんてものは、手に入らない。
古くから今まで、神として崇め感謝され続けたモノなんて、仏陀や釈迦、ムハンマドやキリスト等と言った、それこそ神の啓示を受けた『聖人』くらいなものだ。
そんな彼らの遺物なんざ、手に入れるなんて夢のまた夢。
それら自体は信仰されていないが、その元の持ち主の『謂われ』が有る。それもまた、人間の妄想の地続きであり、力を持つ。
「そんな物、手に入る訳が無かろう」
「そりゃそうね。でも、存在しないと言う訳では無いわよ」
「……先程から随分と意味深なことを言うな、霊夢よ。まさかそれらがこの幻想郷に存在し、それらを知っているようではないか」
「中には、そんなものが有るってだけの話よ。向きになることじゃないわ」
「……そうか」
霊夢が言いたいのは、運が良ければそんなものが手に入る。ただそれだけのことなのだろう。
「なぁ、霊夢」
「何よ」
「付喪神、八百万の神々以外にも、幻想郷に神様なんているのか?自然に、万物に元々宿るものが」
「そんなもの、有り得ないわよ。人間がいるからこそ、そして人間が盲信し続けるからこそ、神は生まれ、神は宿り、神がいるの。人間が存在しなければ、其処に神は存在しないわ」
「そうか」
「だからこそ、山の上の神社の連中は、信仰を集めようと必死なのよ」
「理不尽だよな、勝手に作られて信仰されて、そりゃ期待に応えようと必死になって頑張っても、時には認められず、そうして忘れられるって。勝手に生み出し、勝手に期待しといて、何身勝手なことを言っているんだか」
「あんた、哀れんでいるのね」
「そうだ。彼等に自由は無い。目的の為にしか利用されない」
「偽善ね。あんたのは履物だって、着物だって同じことが言えるじゃない。それを哀れむの?」
「……」
「そう言うことよ。同情なんて止めなさい。それで救えるなんてこと、無いんだから」
霊夢の言うことは何一つとして間違っていない。
同情なんて偽善にすぎなくて、俺が彼らを救える筈が無くって。