東方無風伝 2
「それで、風間は武器を必要とするの?しないの?」
「するさ。素手で妖怪となんか闘えない」
「そう。それじゃ、魔理沙」
「なんだ?」
「風間を霖之介さんのところに連れて行って」
「霊夢が連れていけばいいじゃないか」
「面倒だもの、空を飛べない人間の護衛なんて」
「あーはいはい。ただ、金は霊夢が出せよ?」
「チッ」
「おい、私に出させるつもりだったのか」
「あらー、そんなことないわよー」
そんなあからさまな棒読みと共に霊夢は社の中へと戻って行く。
きっとお金を取りに行ったのだろう。
「すまんな魔理沙。俺の為に色々と手を煩わせるようで」
「心配には及ばないぜ。これは私から風間への『貸し』だ。何時か耳を揃えてきっちりと返して貰うぜ」
「利息は無しだよな」
「十一で引き受けるぜ」
「悪徳金融会社か己は」
「返済は……半年は待ってやるぜ」
「そもそも、俺は魔理沙にどれほどの貸しを作ったのか解らんぞ」
「そうだな……新作の魔法の実験台くらいだな」
「返済が終わる頃には、そうならないんだろうな」
「当然だぜ。変な茸の試食や、私の召使として使ってやるぜ」
「怖いな。因みに、それを反故したらどうなる?」
「魔女との契約だぜ?破ったら風間一生私の奴隷な」
……冗談だよな?
「そう怖い顔するなって。ただの冗談だぜ」
「そうか。良かったよ冗談で」
だが、それでも魔理沙には大
きな貸しがあることは変わらなくて。
「少しずつでも良いから、貸しは返すようにするよ」
魔理沙から受けた恩は本当に大きい。
彼女がいなければ、俺は死んでいた。
彼女がいなければ、俺はこの世界の手掛かりを何一つとして掴むことが出来なかった。
彼女がいなかれば、武器なんてものを手に入れること叶わず、妖怪に殺されているかもしれない。
「感謝してるよ、魔理沙」
「お、おう」
当然の俺の感謝の言葉に同様したか、彼女はそんな照れたような返事をしただけだった。
「ほれ、持ってきてやったわよ」
「お、霊夢。遅かったな」
「良い巾着がなかなか見つからなかったのよ」
魔理沙の言葉に霊夢はそう返す。
霊夢の手には、確かに小さな巾着が乗せられていた。



