東方無風伝 2
「とーちゃく!」
魔理沙は地面に降り立つ。
その際、箒にぶら下がったままの風間はどしゃりと地面に打ち付けられるように倒れたが、彼女はそんなことを気にしない。
「生きてるかー」
「……」
「へんじがない。ただのしかばねのようだ」
「デジャブを感じるな、それ」
「一度有ったことだからな、実
際に」
「そうか」
そう言えば、アリスの屋敷から博霊神社にこうして空を飛んできた時、しかばね云々言っていたような気がする。
「折角目的地に着いたんだぜ、もう少し元気を出したらどうだ?」
「生憎と、精神的にも肉体的にも参ったものがあるんだ。どこぞの魔女のせいでな。だから、元気を出す程の体力を持ち合わせていないのだよ」
「酷い魔女だな全く。後で私か
ら仕返しをしといてやるぜ」
「……魔理沙のことだよ」
「生憎と、私は魔女じゃないぜ」
「おや、それでは空を飛んだのは魔法ではなくて?その服装も」
「私は魔女じゃなくて魔法遣いだぜ。魔法遣いが魔法を使うのは当然だし、この服装はただ単に汚れが目立たないから着ているだけだぜ」
やれやれだ、と言わんばかりに大袈裟に肩を竦める。
全く、魔理沙ときたら言葉の隙間を縫うのが上手いことで。
「いよっと」
そんな気合いの一声と共に立ち上がる。
「これが、例の店か」
「そうだぜ」
その目線の先には一軒の家屋。
店の前には様々がらくたが置かれ、扉の前には『香霖堂』と書かれた看板が立て掛けられていた。
「おーい、香霖。生きてるかー」
魔理沙が、扉が壊れるのではないかと不安になるような強さで扉を叩きながら言った。
「止めてくれないか魔理沙。そんなに強く叩いたら扉が壊れるよ」
「別に良いじゃないか。減るもんじゃないし」
「いや減るよ。修理費とか色々」
扉から出てきた一人の青年。
彼は魔理沙の扱いに慣れているようで、魔理沙の言葉を簡単に流す。
「おや、そこの君もお客さんかい?」
青年は俺と目が合うと、彼はそう問いてきた。
「ああ、魔理沙に連れられてきた。風間と言う」
「初めまして、僕は森近霖之介だ。魔理沙がわざわざ連れてくるということは、君は外来人か
な?」
「ああ、そうだ」
そうかそうかと彼は頷く。
直ぐに俺が外来人だと解ったのは、それほど頻繁に外来人が此処に連れられてくると言うことなのだろうか。
少なくとも、繋がりは有るということなのだろう。



