生誕祭
誰だ!?この神聖な日常を穢した奴は!?原型が残らないくらい引きちぎってやる。
「静雄!ちょっと落ち着け。な?」
「大丈夫です静雄さん!これはちょっとした悪戯みたいなものですから!!」
不穏な空気を感じ取ったのか――事実は静雄がノンブレスで「殺」を連呼していた――慌てて二人がフォローを入れる。
「ホント!僕、大して何もされてませんし!だからお願い暴れないで!!」
二人の必死の懇願――特に逃げられない帝人――により、なんとか静雄は怒りを治めることに成功。
「落ち着いたか?静雄。
まあ、というわけだから坊主のこれをなんとかしてやってくれ。」
何がというわけなのかさっぱり分からないが、一応納得しておく。トムが言うなら間違いはないだろう。
「お願いします。」
再び荒ぶる魔人を前に無防備にも背中を向けるザ・平凡。その動きを戒めている鎖を引きちぎるべく手を伸ばす。
が――
「っ!」
帝人にかするかかすらないかくらいのギリギリのところをナイフが横切った。
「ちょっとやめてよシズちゃん。」
元凶は言わずもがな。
「シズちゃんの野蛮な力のせいで帝人君が壊れたらどうしてくれるの?」
「い~~ざあ~~やあ~~~!!!」
「もしかして坊主のこれって……。」
「ええ、臨也さんの気まぐれです…。」
背後でげんなりした会話のやり取りがなされていたが、一瞬にして沸騰した静雄には聞こえない。
「てめえ!何しに戻ってきやがった!!?」
「シズちゃんったら、そんなこと聞くなんて野暮だよ!あ、野暮の意味分かる?」
「うるせぇ!黙れ!」
「聞いてきたのそっちな癖に。」
「てめえの声聞くだけで耳が腐る!」
「わあ、気遇!俺もシズちゃん見ただけで馬鹿が移りそうで辟易してたんだよね。
あ、そうだ!シズちゃん、いいこと思いついた。そこの標識4、5本抱えて海に飛び込んでみなよ。そうすればシズちゃんは俺の声を聞かなくて済むし、俺もシズちゃんを視界に入れなくて済む、なおかつシズちゃんは永遠に醒めない夢の世界に行ける。これぞ皆が皆喜ぶ平和的解決策。流石俺。
と、いうわけで、シズちゃん東京湾にでも行ってらっしゃい。」
剛速球で交わされる会話のキャッチボールは当然ながら長く続くことなく、すぐに刃を標識でホームラン返すという果てしなく危険な野球――但し選手は互いに一人だけ――へと変わった。
同会場で第二ラウンドまで行われた区域は暫くの間は立ち入り禁止となった。