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「絶対的な自信があるように思えるってこと。まあ、私の場合はさ、色々イレギュラーだったけど。相手に対して盲目的っていうか、自惚れがあるっていうか」
 沙樹はなかなか手厳しいことをずばずばと言ってのけた。基本的にこの子には逆らえないので、俺はおとなしく黙って聞いていた。
「なんていうか、正臣は静雄さんのこと、もてあそんでると思う」
 あまりにストレートなその言葉に面食らって、目をまるくした。沙樹は俺の顔を見て、くっくっと笑い出す。
「自覚ないの、嫌だあ」
「……ねえよ、そんなん、もてあそんでるとか」
 言いよどむと、すかさず沙樹は突っ込んでくる。
「多少は思ってるくせに。正臣、小悪魔だね。静雄さん可哀想」
「はいもうストップ、ストーップ! 沙樹、今日喋りすぎ」
「どうしてよ。ここからが面白いところなのに」
「面白いってなんだよ。なんかお前に色々言われると、真実味帯びてて怖い」
 茶化して会話を遮ったけど、本当は沙樹にもっと話していて欲しかった。誰かに決めてもらわないと進めない、俺はそれだけ臆病だった。一度壊れたものを直そうとする作業ってのは、こんなに勇気がいるもんなのか。

 その後少し喋ってから店を出た。さて、俺は静雄とこれからどうするべきかっていう、投げっ放しにしてる問題にそろそろ取り掛からないといけない。惰性で身体だけの関係を続けていくのは、いい加減気が引ける。でも俺がどんなつもりだろうと、静雄は優しいから許容されてしまう気もする。裏返せば、それだけ俺のことは本気じゃないってことかもしれない。それじゃ悔しい。俺のこと、思い知らせてやりたい。
 再び始まってくれたこの関係を、うやむやにしたくはなかった。静雄と再会できたのも、俺を許してくれていたことも、自分にとっては結構奇跡みたいなもんだった。今度こそ、静雄の優しさに甘えないで、俺はなんとかできるだろうか。静雄はそれを受け入れてくれるだろうか。
 不安は沢山あったけど、今は少し浮かれているからか、あんまり怖くなかった。帰りの電車のなかでうとうと居眠りしながら、頭のなかは静雄のことでいっぱいだった。