二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

植物系男子

INDEX|15ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 

その12




その日俺は迷惑な声に起こされた。ぺしぺし頬を叩かれて、痛くもなんともないのだが他人が触れる違和感に重い瞼を開ける。

「シズちゃん起きなよ。見てよコレ」

臨也の声がして半身を起こした。頭がうまく動かない。ぼやける視界の中でのっそりと首を回すと、目の前に鮮やかな朱色が飛び込んできた。
輪郭が曖昧だったそれは徐々に焦点が合っていく。花だ。中央に黄色い葯をつけ、尖った花びらをもつ花。
なんで花が。寝起きで先ず思ったのはそれだった。
しかしよく見れば、花は緑色をした鋭いトゲが生えたものの上にあった。あれ、とそこでようやく気付く。
サボテンだ。あのサボテンのてっぺんに、子供の手のひらくらいはあろうかという大輪がいくつも咲き乱れている。真上から見たらサボテンだと思えないほど。
不思議に思い首を傾げる。と、珍しく同じことを考えていたらしい臨也が、鉢を手にしたまま不思議だよねぇと感慨深げに覗き込んだ。

「今朝見たら咲いてたんだ」
「なんで急に…」

鉢の植え替えこそしたものの、基本あのサボテンは放置していた。思えば一度も水をあげた記憶すらない。勝手に成長しているらしかったが、花まで咲くとは思わなかった。昨日見た時点では蕾も何もなかったのに。いやサボテンに蕾が出来るのか俺は知らないのだが。
まじまじと見つめていた花から視線を上げると、いつの間にこっちを見ていたのか臨也と目が合った。
サボテンの花に負けず劣らずの赤い瞳を見て、あ、と思い出したことがある。

「おはよう、シズちゃん」

毎日の決まりである挨拶に答えようと、口を開きかけたところで唇を奪われた。
まただ。昨日の、いや日付的にはもう今日か、記憶が薄っすらと甦ってくる。
唐突にキスしてきたあと、臨也は何も言わなかった。俺は酒の回った頭で疑問符を盛大に浮かべていたが、やがてどうでもよくなって寝ることにした。アルコールのせいで頭が重く、睡魔は直ぐに訪れた。
そして今日。何をもってこんなことをしでかすのかわからないが、俺は好きにさせておいた。リアクションするタイミングを逃したというか、何だか本当にどうでもいいのだ。別にこいつが俺にキスしようが何しようが、俺は俺だ。まぁこんな俺なので初めては初めてだったのだが、何の感情もわかなかった。

「風呂入ってくる」

未だ圧し掛かる臨也を力任せに押しのけてそう告げる。臨也は酷く詰まらなさそうな声音で、いってらっしゃいと吐き捨てた。
それから奴は事あるごとにこんな戯れをするようになった。出かける前だったり、食事のときだったり、何が楽しいのか知らないが、俺にとってはいい迷惑だ。
仏頂面のままでいると、段々臨也の機嫌が降下していくのがわかった。わかるのだが、特別何とも思わなかった。
何だか最近、ぼうっとしていることが多いとトムさんに言われた。自分ではそんなつもりはないのだが、そう見えるそうだ。
ばったり会った新羅には弟に似てきたと言われた。昔から正反対の兄弟で、本当に血が繋がっているのかと真顔で言われるくらいだから、その言葉は新鮮だった。
幽と言えば、この間久しぶりに電話で話した。幽にも、様子がおかしいと言われた。俺は何もしていないのに、元気がないと本気で心配された。
普通に生活をしているだけなのに、何故皆口を揃えて“おかしい”と言ってくるのか、今の俺には理解出来なかった。


作品名:植物系男子 作家名:ハゼロ