みんなといっしょ!
二人の心配を余所に乱太郎は土井と共にその場から消えていた。
残された二人は。
「きり丸」
「だー!庄、いくぞ」
「後で、乱太郎にきっちり話聞かないとね」
「当たり前だ!」
自分たちの知らない乱太郎の力。どう見ても自分たちよりも実力が上。今の状況だって見抜いた。
「急ぐよ、きり丸」
「おう」
二人は札取りを広げている場所へと急いだ。
「乱太郎」
「はい?」
「今の詳しい状況がわかるか?」
「私の使鬼で視たかぎりは、ドクタケの軍がこちらに向かっています。まあ、なんとかなりますよ」
「お前しかいないのに余裕だな」
「そんな私一人でどうこうはしませんよ。先輩達も先生もいらっしゃいますし」
「お前は」
一人でどうにかできることはできるらしい発言に土井は呆れ顔だ。
「もう少し少なければ誰にも気が付かないようにしたんですけどね。ここを突破されれば学園に入ってしまいます。それは嫌ですから」
「そうだな」
二人が着いた場所には、ドクタケ忍者がすぐそこまで迫っていた。
「皆!先輩!」
その場にいた者たちはきり丸と庄左ヱ門の声に身体を止める。
「どうかしたの?」
しんべヱの質問にきり丸が答えた。
「土井先生と乱太郎からの伝言だ。ここは狙われてる。各自でそれに対応しろだと」
「は?なんでそんなことに」
左近の言葉に庄左ヱ門が応える。
「詳しくはわかりません。でも、伝令を頼まれました。なので、札取りは一旦中止です」
土井の言葉であれば本当であろう。だが、今ここに乱太郎がいないのは何故なのか。
「きり丸、庄左ヱ門。乱太郎はどうしたんだい?」
数馬の言葉に二人の声が重なる。
「「乱太郎は先生と一緒に向こうに行きました」」
その言葉に誰もが驚く。
「な、危ないじゃないか!」
「そうだよ。乱太郎なんで一緒にいっちゃったの!?」
驚くのは無理もないのだが…。それぞれに乱太郎のことを心配していると、一匹の蝶が飛んできた。きり丸と庄左エ門は先ほどみた蝶だ。そして、その蝶から乱太郎の声が聞こえた。
『あー、皆。声聞こえてる?』
「乱太郎!!」
声が重なる。それに乱太郎はわかっているように話をきりだした。
『訳は後でいうし聞くから。先輩達もです。土井先生からの伝言と通り札取りは一旦中止です。先輩達は学園の守りに入ってください』
「お前はどうするんだ?」
左近の言葉に乱太郎の返事は。
『私はここで止めますよ。あ、伏ちゃん、きさちゃん、三ちゃんと…そうだな。きり丸としんべヱと金吾はこっちきてね』
「乱太郎!」
それぞれの聞きたいことは山ほどあって。けれど、それを聞ける状況でもなかった。
『学園の守りはお願いします。取りこぼすことはないと思いますけど。庄ちゃん、兵ちゃん、そこの森も一応守ってて。特に兵ちゃんはそこに色々作ってると思うしね』
「よくわかったな」
『あはは。じゃ、後、よろしくー』
蝶はぱっと消え、三治郎の手には符が落ちた。
「あー、もー! 何がなんだかわからないけど!」
富松が叫んだ。
「僕たち上級生は学園で守りと固めろってことだね」
と数馬がいい、六年は皆で頷いた。
「オレ達はどうするかな」
三郎次の言葉に、孫兵が支持を出す。
「五年は一部は森で四年は組と一緒に行動しろ。半分は学園に四年のい組とろ組もだ」
「わかりました」
そして、それぞれが動き出した。
「とりあえず、これでいいかな」
「お前、その使鬼つかい誰に教わったんだ?」
「独学に近いです。きっかけは伊作先輩ですけど」
話を聞いて納得する。
「後、さっき呼んだ者達の理由を聞いていいか?」
「伏木蔵と三治郎は私の術を手伝って貰います。本当なら一人でできますけど。
人数が多いので。きり丸と金吾しんべヱはその間の時間稼ぎを」
「喜三太は?」
「喜三太は三人のフォローに入って貰います。多分、庄左ヱ門が伊助も送ってくれると思いますし」
乱太郎の言葉に土井は相変わらずの信頼関係に苦笑する。
「土井先生?」
「お前のお手並み拝見と行こうか?」
「手出しはしないんですね?」
「ああ、おまえらだけでなんとかしてみろ。危なければ助ける」
学園の生徒であるかぎりは守る対象だ。だが、乱太郎の実力がみたいという本音がある。
「他の者に実力を見せたくはないだろうがな。それば諦めろ。やるなら、派手にやってみろ」
珍しく好戦的な言葉に乱太郎はにこりとして返事を返した。
「四年は組猪名寺乱太郎。了解です」
「乱太郎、きたよ〜」
すぐに呼び出された仲間がその場に現れた。
「みんな」
「…土井先生は?」
きり丸はいないことを不思議に思う。
「見てるから、自分たちでどうにかしてみろだって」
「それはやりがいがあるねぇ」
伏木蔵の言葉に乱太郎は頷く。
「手っ取り早く話すよ?」 乱太郎が作戦を話す。
「私と三ちゃん、伏木蔵で幻惑とトラップを仕掛けるから金吾、きり丸、しんべ
ヱは時間稼ぎね。きさちゃんと伊助はフォローよろしく!」
「手段は?」
「なんでもあり。でも、できるだけ怪我はしないでよね」
保健委員の言葉に皆苦笑気味だ。
「乱太郎」
「きりちゃん?何?」
「終わったら、全部話して貰うからな?覚悟しとけ」
「賛成〜」
「しんべヱまで何さ」
二人が消えると金吾も動く。
「オレはそんなに気にはしてないけど。話は聞かせろよ?」
「金吾」
「んー、僕も詳しく聞きたいなぁ」
「きさちゃん」
「「いってきます」」
二人も消えた。そして、伊助。
「僕はどっちに行けばいい?」
「んー、まだこっちにいてほしいな」
「了解」
多分、こっちはこれでとまると思う。
「乱太郎」
「何? 伊助」
「後が大変だね?」
ニコニコと伊助が笑う。それを見た乱太郎はため息だ。
「…伊助もなの?」
「そりゃあねぇ」
大好きなクラスメート。ずっとずっと守ってあげなくちゃと思っていた。それが蓋を開ければ自分達よりも実力があるとなればまた話しは違ってくるだろう。
「ちゃんときっちりはっきりどうしてこんなことをしてたのかを聞かなくっちゃねー」
「…はいはい。そんな庄ちゃんみたいな言い方しないでよね」
「え? そう聞こえた?」
「聞こえました」
「あはは」
伊助は笑う。
「…同じ部屋だとこのみも被るのかなぁ」
「何かいった?」
「ううん」
庄左エ門が乱太郎のことを気にしているのは百も承知。でも、ライバルはライバルで。
「さーて、さっさと終わらせますか」
「うん」
乱太郎と伊助はその場から消えた。
さて、こちらは森の方で待機している組。
「しょー。待つのがすっごく暇なんですけど」
「兵太夫。お前も本当に基本攻撃型の奴だな…」
「つーか、なんで僕はここにいるんだっての!」
乱太郎に言われて森のからくりは作動させている。そこに残っているのは四年は組と五年生の左近と久作だった。
「まったく、乱太郎のやつ、勝手ばかり言いやがって…」
「左近、そう怒るもんじゃないだろ?」
「わかってるさ。でも…」
「納得はいきませんよねぇ…」
後ろにいた後輩。二人は驚きもせず振り向く。
「庄左エ門…」
「多分、ここの誰も納得なんてしてませんよ」
「まったくです」