みんなといっしょ!
「よし、もう少しだけ打ち合わせするよ」
「はーい」
「わかりました」
「ああ、もうこれが立花先輩にばれると怖いなぁ…」
ポツンという兵太夫の言葉に乱太郎が笑い、いいこいいこと頭を撫でた。
「何よ…」
「ん? 兵ちゃん、可愛いなぁと思って」
「…可愛いいうな!」
「そこの二人ー早くこーい」
「早く―」
「はいはい」
「今行くよ」
そして、夜が更けていくのだった。
さて、次の日。左近に連れられて四人は神主のいる神社へとやってきた。そこに待っていた神主はやってきた五人を快く迎えてくれた。
「本当にすまないね」
「いいえ、困ってるということは左近先輩に聞きました。安心してください」
「そう言って貰えるとこちらも助かるよ」
「そういえば、神主さんはずっとここで?」
「ええ、なので私もここのお祭りで舞を舞ったことがあるんですよ」
「そうなんですか」
「ええ」
「なので、今回は本当に困っていたんです。なので、本当に助かりました」
「お役に立てるのなら、この上ないですね」
神主の感謝の言葉に乱太郎も嬉しかった。
「今回はあなた達に全てお任せしますね。左近さんからのお話を聞く限り問題はないと私の方で判断しました」
「…いいんですか?」
「はい。今日お話をしてあなた達を見てそれが確信出来ました。なので、よろしくお願いします」
「わかりました。お引き受けいたします」
神主は仕事があるためにその場からいなくなった。
「さて、と」
乱太郎は左近に向き直る。
「左近先輩も手伝ってもらいますよ?」
「はいはい。どうせそうなるとは思っていたから手伝うよ」
既に予想していた左近は頷いた。
「そういえば、左近先輩」
「何だ? 三治郎」
「能勢先輩はいつごろこっちにくるんですか?」
「あー、久作な。多分今日の午後には着くと思う」
「能勢先輩も忙しいですしね」
「まあな。でも今回のことはすぐに了承がきたけどな。どうやら、近くで仕事してたらしい」
「じゃあ、久作先輩が来たら覚えて貰うことにして。こっちはこっちで決めないとだね」
「そうだね〜」
「よし、神殿にいくよ!」
乱太郎の声にそれぞれが着いていった。
「これは広いな」
「これなら四人で踊ることは問題ないね」
「そうだね」
「ん、演目はどうしよか」
乱太郎が聞くとそれぞれに返ってくる。
「剣舞じゃなかったの?」
「それにしようかと思ったけど。これだけ広ければ他の事も出来るかなぁって」
「ああ、それは言えるかも」
「左近先輩」
「なんだ?」
「今から衣装って出来るものですかね?」
「そうだな…。裁縫得意な助っ人でもくれば出来るけどな?」
「ああ、それなら久作先輩と同じような時には組の皆がくると思いますから何人か連れてってくれて問題ないです」
「なら、出来る」
そう断言する左近にニコリと笑う。
「つかな。お前、は組を使う気まんまんだな」
「そりゃね。は組は巻き込んで当たり前がモットーですから。ね? 皆」
「乱太郎に勝てないだけだけどね」
「でも面白いことは」
「皆で共有。これがは組ですから」
「相変わらず、仲がいいことで」
左近はクスリと笑う。今の六年は組の絆は本当に強くて。いつも一緒というのが誰もが持つ印象だ。
「じゃあ、衣装の色決めよっか」
「あ、それ僕が決める!」
兵太夫が挙手する。
「兵ちゃんってば、こういうことはやっぱり作法って感じだよね」
「だって、三ちゃん。合わない色は本当に合わないんだ。なら、合ったものを選ぶべきだろう?」
「兵太夫のいうとおりだな」
衣装を作ることのできる左近が頷く。
「で? どんな色を合わせるんだ?」
「三治郎は紅、喜三太は群青で。乱太郎は橙か黄」
「…お前は?」
それは兵太夫以外の者から言葉が上がった。
「兵太夫は紫だよねー」
「そうそう、それ以外なしと思う」
「兵ちゃんは紫しかない」
「それは全員一致なんだな」
「「「はい」」」
「だそうだ、兵太夫」
「…なんで、紫なんだ?」
「だって、作法だから?」
「立花先輩から連想したかなぁ」
「でも、兵ちゃんも紫っていうイメージあるんだよね。ピンときりっとしたイメージ」
乱太郎がそういうと二人も頷いた。
「なら。そのイメージで衣装作ってやるよ。衣装のデザインはオレが考えてもいいんだな?
「それはお任せします」
「僕、左近先輩の物って好きですー」
「あ、僕もです」
左近は町医者以外にも顔があり、かんざしや着物などのデザインをしていた。それは、学園の頃からなので知っている者も多い。
「ありがとな。じゃ、オレは一旦戻るから」
「はい。また後で」
左近がその場を去ると四人だけになる。
「さて、そう設定しようか?」
「あのさ、一個提案があるんだけど?」
「はい、兵ちゃん」
「舞で春夏秋冬やってみない? 乱太郎は春、夏は喜三太、三治郎は秋、僕は冬。それぞれが四季を見せるんだ」
「あ、それいいね」
「僕も賛成〜」
「なら、決めようか」
そして、舞手達が自分達の舞を決めていく。
さて、どんなことになるのでしょうか?
「それにしても」
「…毎回毎回、何かに巻き込んでくれるよね。乱太郎」
「今回は、三治郎と喜三太。兵太夫はどうやら面白がっていったらしいけど」
「多分、少し後悔してるだろうね」
「だろうな」
兵太夫は少し遊んでしまう傾向がある、今回はそれが仇となったのはは組メンバーは知っている。
「それにしてもだよ?」
庄左エ門が一緒についてきた伏木蔵を見る。
「今回の発端は伏木蔵なんだよね?」
「そうだよ」
ニコリと笑いながら伏木蔵は答える。
「じゃ、伏木蔵が左近先輩に話さなかったら今回のことはなかったの?」
「だねぇ」
面白がっている伏木蔵。伏木蔵はは組以外で乱太郎と一番長い時間を過ごしている。そのため。乱太郎が率先して動いた時に必ずそこにいるのが伏木蔵だったりする。反対に伏木蔵が動いた時に乱太郎はどちらかというと巻き込まれている事が多いのだが。
「まあまあ。あ、伊助、きり丸、しんべヱ」
「なあに?」
「何?」
「何かあった?」
「向こうにいったら、左近先輩の衣装作りのお手伝いをよろしくお願いしますだって」
「は?」
「…なんでそうなってるの?」
「伏木蔵、理由を述べよ」
「それはですね」
皆、伏木蔵の言葉にえーっと驚くしかなかった。
「乱太郎って、舞なんて出来たの?」
と団蔵が聞くと伏木蔵が答える。
「うん。いつだったかなー。乱太郎から聞いたことがあったのを思い出してね。左近先輩が来た時にそれいったら今回の事に発展しましたー」
「…元凶な訳だ」
庄左エ門の言葉にニッコリと笑う伏木蔵。最凶の言葉は伊達に持っていない。
「ねー、いつ頃つくのかな?」
しんべヱがおにぎりを頬張りつつ、聞く。
「しんべヱ、お前それお昼用じゃないの?」
金吾が聞くとしんべヱが首を振る。
「ううん。これは僕専用のなのー。おばちゃんがね特別にって作ってくれたんだ」
大食いはずっとそのままのしんべヱは人の三倍以上は食べる。
「ああ〜。もうしんべヱ、あんまり食べると乱太郎に怒られるよ?」
「ええー、大丈夫だよ」
「でも、食べすぎはダメだからね?」