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野沢 菜葉
野沢 菜葉
novelistID. 23587
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きらきら星 【前編】

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4
遠くで予鈴が聞こえる。
行かなきゃと思うのに動けない。

嬉しい?悲しい?辛い?辛くない??
複雑に感情に胸が締め付けられる…。
訳がわからなくなって、すがるように水谷をみると、水谷は両手でオレの頬を包み込んだ。

「泣きたいなら泣いていいんだよ。」







その言葉を聞いた途端、冷たいものが頬を伝う…
それを引き金にオレは訳も解からず泣き出した。

悲しい訳じゃないのに…もうオレは大丈夫なのに……強いのに……


水谷はあやすようにオレの背中をポンポンと叩く


…優しい


…心地いい



あぁ、そうか
オレはこんな風に誰かに甘えたかったのかもしれない…

泣きじゃくりながら、オレの中でふとそんな考えがよぎった…



教室に戻って席に座ると、巣山が心配そうに話しかけてきた。
「大丈夫か?腹でも下したか??」
「えっ…あはは、そうなんだよ。久しぶりの買い弁であたったのかな?」
「無理すんなよ。さっきの先生には言っといたからな。」
「ん、あんがと。もうすっかり治った。」




オレが泣きやみそうもないので、水谷は携帯を開いて、巣山にメールを送ってくれたみたいだった。
たぶん内容はオレが具合が悪くなったから、授業に出れないってことだと思う。
メールを送り終わると「これでもう安心だね。」と柔らかく笑うので、それを見てまた涙が出た。

水谷の腕の中で思いっきり泣いていると、何故か鼻をすする音がしたので、見てみると水谷まで泣き始めていた。
それで2人で泣いて泣いて…お互いの泣き顔を見て笑いあって…

涙が止まったのはいいけど、お互いの目が腫れてしまって、慌ててタオルで冷やした。
その間、特に会話もしなかったが、水谷はオレの隣に座って、ずっと手を握ってくれていた。

照れくさかったけど、伝わる温度は暖かくて、とても安心できるものだった。

授業終了のチャイムが鳴ると、「そろそろ行こっか」と水谷が言った。
コクリと頷いて特に何も話さずに歩いていた。
別れ際に一言「ありがとう」と呟くと、嬉しそうに笑ってくれた。





「…まだ手の感触残ってる気がする……」
ポツリと呟いてしまうと、さっきのことが思い出されて、急に恥ずかしくなる。

あーなんであんなに甘えてしまったんだろう。オレってあんなに涙もろかったっけ?
…いやいや、あいつがいけないんだ。あんな風にされたら…あんな風に優しくされたらオレ……


あれこれと考えてしまって、その後の授業は全く集中できなかった。