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ぐらにる 争奪2

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 一番、護衛には向かないだろうと思われるのだが・・・・と、心配した顔をしたら、「今の所、この特区内を移動しているだけです。それに、SPは、別に連れていますから。」 と、その心配についても返事された。
「しかし、ユニオンのトップファイターがストーカーとは思いもしませんでした。」
「いや、あれが、トップファイターだと、俺は思いませんでした。」
 どっか、頭のネジが、三個ばかり抜けた人というイメージだったから、まさか、そんな優秀だとは気付かなかった。なんとかと天才は紙一重とは、よくいったものだと、感心するしかない。
 クルマが乗り入れられたのは、超がつくほどの高級五つ星ホテルというやつで、そこのラウンジで、お茶をして、それから、ぶらぶらとショッピングアーケードを散歩した。とりあえず、付き合ってる設定ですから、と、紅龍は、自分の腰に手を回している。そして、きっちり、背後からは、わかりやすい殺気じみた気配が漂ってくるのを気付かないフリで、さらに宿泊棟のほうへ歩を進めた。




「へぇーあれが、ストーカーというものですか? 」
 グラハムのさらに後ろに、王留美と、護衛役の刹那と、SPが、こっそり隠れて、そのストーカーを観察していた。庶民たちなら、ストーカーというのは珍しくもない生き物だろうが、ハイレベルのセレブな王留美あたりになると、それは珍獣というものに該当する。さほど、スケジュールが立て込んでいないので、ティエリアからの要請を、おもしろ半分に引き受けたのである。
「王留美、おまえの護衛は、馴れ馴れしすぎる。」
 対して刹那のほうは、紅龍が、ロックオンの腰や背中に手を回しているのが、なんだかムカつくらしい。
「あら、あれは演技でしてよ? 刹那。仲を裂くことができない熱々カップルということにしておかないと、あのストーカーが増長するから、です。言っておきますが、紅龍は、そちらの趣味はありませんから。」
「当たり前だ。」
 あってたまるか、と、刹那は、むうと口をへの字に曲げて睨んでいる。雑談しつつ、宿泊棟のほうへ歩いて行くふたりを、追いかけるようにグラハムも移動していくのだが、ここのホテルはセキュリティが厳しいのでも有名で、カードキーがないと、エレベーターすら作動させられないようになっている。だから、宿泊棟へは出入りできないのだ。追跡は、そこまでだ、と、刹那と王留美も、それを隠れて眺めていたら、やっぱり、ストーカーはエレベーターの手前でホテルのボーイに留められていた。


 事前に、刹那には、本日の予定が連絡されているので、それで慌てたりしない。ここのホテルに王財閥名義ではなく、別名で部屋を取ってある。ここなら、部屋まで強襲されることはない。そこへ、ロックオンを保護すれば、とりあえず、ストーカー被害からは逃れられるだろうという計画だった。

 エレベーターの前で地団駄踏んでいるグラハムは、エレベーターの止まる階数を確認すると、フロントへ走った。
「ほほほほ・・・・取れるはずがないのに。」
 同じ階数を予約しようとするだろうが、どっこい、そうは問屋が卸さない。上の階数の部屋はフロアーごとに、ワンルームという作りになっている。各階ごとに、セキュリティがあるから、非常階段での移動もできない。まさに、セレブのための部屋である。走り去ったグラハムを無視して、王留美と刹那たちも、そのエレベーターで、同じ階へと上がった。
「どういうことだ? 王留美。おまえさんまで、こんなふざけた遊びに乗っかることもないだろ? 」
 部屋で待っていたロックオンは、王留美の姿を認めると、抗議した。だいたい、マイスターとエージェントなんてものは、ミッション以外で接触することはない。確かに、地上での隠れ家や移動には、その力を借りたりするが、それでも、面と向かって逢う必要はないのだ。
「ですが、相手は、かなり危険だと思いますが? 」
「危険って・・・俺が女ならな。あの男から情報を搾るつもりだから、構わないでくれ。」
「そうはまいりません。ティエリア・アーデからの要請は正当なものであると、私は判断しています。情報など、私どもで収集すればよろしいことですわ。あなたが、行動なさるようなことではないでしょう。」
 見た目、小娘な王留美だが、組織の関係者であるから、一筋縄ではいかない。どうやって論破するかなーと考えていたら、部屋に備え付けの電話が鳴った。すぐに、紅龍が出て、二言、三言、言うと、すっぱりと切ってしまった。だが、すぐに、かかってくる。面倒だとばかりに、紅龍が、回線ごと引き抜いた。
「ほら、ごらんなさい。まだ、しつこく追いかけています。」
「・・え・・マジ? 」
「事実ですよ、ロックオン。『私の姫を出せ。』 と、相手は叫んでいましたから。」
「姫? ロックオンがか? 」
 刹那すら、びっくりする呼び名だ。確かに、あの男、自分に向かっても、「愛だっっ。」 と、叫んでいたから、どこか言語中枢が麻痺しているのかもしれない。
「さて、どうしましょうか? できれば、あの男がユニオンに戻ってくれれば安心なんですけど。」
 さすがに、ユニオンの一軍人を呼び戻させるようなことは、王留美でも躊躇する。その指示が、自分からだとバレたら、ロックオンが王財閥の関係者だと判断されるからだ。
「殺るなら、俺が。」
「だぁぁぁぁぁぁ、待てっっ。刹那、それはダメ、それはっっ。」
 純粋培養テロリストな刹那は、邪魔者は消すが基本だ。もちろん、間違いではないのだが、こんなことで、物騒なことはして欲しくない。
「やはり移動でしょうね。・・・いつもの隠れ家にでも移動してください、ロックオン。」
「まあ、それでもいいんだけどさ。けど・・・」
 滞在一ヶ月だと思っていたので、刹那の食事の準備もしてやろうと、食材を買い込んでしまった。あれらを捨てるのは、とても胸が痛い。根っから貧乏性にできている自分には、あれだけの材料を、無造作に捨てるというのが、罪悪感を感じるものになる。
「あのさ、お嬢さん、一日だけ、借りてるマンションに帰してもらえないか? ちょっとやりたいことがあるんだ。」
「荷物でしたら、後で運ばせます。」
「いや、そうじゃなくて・・・・刹那の隠れ家に保存食を差し入れするつもりだったから、それを作り置きしたいんだが。」
「はあ? 」
「いや、こっちに滞在することなんてないから、こういう時にでも、刹那の分を用意してやりたくてさ。・・・一日あれば、できると思うんで、今夜にでも帰してもらえないか? 」
 マイスターたちは、別々に隠れ家があるし、休暇を過ごすのも交代だから、お互いに行き来することもあまりない。単独行動している時の刹那の食事事情を尋ねたことがあって、ジャンクフードが、一番面倒がなくていい、なんて意見を聞いていると、成長期の栄養摂取について真剣に考えてしまう。できるなら、バランスの取れたものがいいわけで、サプリメントではなくて、ちゃんとした野菜や肉、魚というものを食べていただきたいというのが、ロックオンの意見だ。
「愛されてますね? 刹那。」
「五月蝿いだけだ。」
作品名:ぐらにる 争奪2 作家名:篠義