かぐたんのぷちぷち☆ふぁんたじぃ劇場Q2
「君がひとりで食べてしまったんですか?」
静かな声で先生が訊ねました。かぐずきんはティヘっ☆と舌を出しました。にっこり笑って先生が言いました。
「反省文、100枚書き終えるまで断食です」
「ええーーーーっ!!!」
当然ながらかぐずきんは猛抗議しました。ですがどんなにブータレたところで、先生の厳しい裁定は覆りませんでした。
――もう決して、他人の所有物を断りもなく腹に収めたり致しません、かぐずきんはしくしくしながら反省文を書き上げました。
かすていらとかるぺす勝手に食っちまったことに関してはこうしてがっつり怒られましたが、いっぱい摘んでいった花の方は先生も喜んでくれました。先生の標本作りをいそいそ手伝っているおおかみを、反省文書きながら横目に見つつ、だけどやっぱり何だかなー、いまいち釈然としないかぐずきんなのでした。おしまい♪
【10】かぐらひめ
昔々あるところに、その日暮らしの貧しいおじいさんとおばあさんがいました。
空きっ腹を満たすため、元メガネ少年のおじいさんは裏山へたけのこ堀りに出かけました。ですがその日に限ってめぼしい場所はあらかた掘り返されてしまっていました。家から担いできたしょいこの中は空っぽのままです。おじいさんはがっくりきました。
このまま手ぶらで帰ったら、またあのどえすの天パばーさんにネチネチ精神的にイビられるんだろうなァ、ボクはいたってノーマルだからなじられたってたのしくもなんともないよ、おじいさんはそんなフツーのことを思ってぶつぶつぼやきながら山を下りるしたくにかかろうとしていました。
と、目の前に、黄金色に光輝く一本の竹がぬうっと生えておりました。
「!」
こりゃただごとでないぞ、おじいさんは飛びつきました。たけのこ掘り用の道具しか持ってきていなかったので、竹を割って中身を確かめようにもなかなか作業がはかどりません。振り下ろす唐鍬が滑って、気持ちばかりが焦ります。そのときでした。
――スパーーーン!!!!
自ら手刀で竹を割って、竹の中からメンマの妖精みたいなチャイナ風の衣装を着た女の子が飛び出してきました。
「!!!」
びっくらこいたおじいさんは腰を抜かしてしまいました。すっくと立ったおだんご頭の女の子が、開口一番、言いました。
「おなかすいた」
「……」
おじいさんはアワアワするばかりでまともに口もきけません。少女はひょいとおじいさんの首根っこを掴み、脇に置いてあったしょいこの中に放り込んで言いました。
「家、どっちアルか?」
「……、」
逆らったらどんなひどい目に遭うか、おじいさんは震える指でふもとの方を指しました。おじいさん入りのしょいこを背負った少女はカンフーシューズのつま先を蹴り、ばびゅんと駆け出しました。しょいこの中で猛烈な風圧に耐えながら、おじいさんは生きた心地がしませんでした。
目指すふもとのすだれ屋根の家に着き、少女がガラリと戸を開けました。
いままさにばーさんがぶあつく切ったようかんを大口にあーんと放り込まんとしているところでした。
「!!」
ばーさんはものすごい勢いでようかんを後ろに隠しました。
「なっ、ナンだダレだおまえ、」
精一杯の虚勢を張ってばーさんが言いました。
「……ひんそーな家アル」
ばーさんの問いには答えず、背中のしょいこをドンと土間に下ろすと、少女は眉を顰めました。
「すっ、すみません……」
おじいさんはしょいこのふちに捕まって小さな声で詫びました。
「って、何謝ってんだよっ」
立ち上がってばーさんがキレました。
「いきなり人ン家開けてしみったれてるだなんだ、ヒジョーシキなのはこいつの方だろがっ」
「すっ、すみません……」
おじいさんはますます小さくなってしょいこの中に首を引っ込めました。ばーさんはイラッときました。気持ちを落ち着けるために、隠したようかんをひときれ放り込んでムグムグしました。口中に広がる控えめな甘さが、凝り固まった心の筋をほぐしました。
「えー自分ばっかりー、」
少女が不服の表情で訴えました。ほんのちょびっと、心にゆとりができたばーさんは、しぶしぶながらも残りのようかんをひときれずつ、少女とじーさんにわけてやりました。
いろりばたで三人でようかん食ってお茶飲んで、軽く世間話してしみじみしたら、さっきまでのギスギスした空気はすっかり和みました。つくづくお茶とお茶菓子の効果は絶大です。
「……ひんそーっていうのは、こぢんまりしたいいお家ですねって意味アル」
出がらしのお茶をすすりながら、少女がぼさつ顔で言いました。
「こんどこくごドリル拾ってきてやるから、もーちょっとモノの言い方べんきょーすんだぞ、」
同じく地蔵顔のばーさんが言いました。
「でも、本当言うとボクもね、この家は実用第一でケレン味が足りないなぁと思ってたんです」
――今度屋根に竹細工の金のしゃちほこでも乗せてみようかな、おじいさんが真面目な顔で言いました。ってソレおもっきりパクリやないかーいっ!! 三人で同時にツッコんで、場はどっとわきました。
てなカンジにすったもんだありつつすっかり意気投合した三人は、どーすればこのしみったれた家を金銀財宝で埋め尽くせるか相談を始めました。
文字通り竹から生まれた少女をイタではないガチ設定の地下アイドルとして売り出そうと試みたり、ありがたい不老不死の薬というふれこみですこんぶ工場からタダでもらってきたすこんぶの粉をけんこうブームのバナナやら納豆やらと抱き合わせて叩き売りしてみたり、ついにはアナタのイメージで詩を書きます!おじいさんが路上で一行詩人してみたり、ばーさんが辻であてずっぽうの天パうらない始めてみたりと、思いつく限りいろいろやってみたのですが、いまいちどれもパッとしませんでした。
行き詰まるビジネス展開、三人の関係はまたギスギスしてきました。今では誰も互いの目を見て会話することすらしようとしません。
こんなときに、外部から共通の敵でも現われてくれればかつての団結も取り戻せるのでしょうが、物語がそう都合よく……ありましたありました、彼らの倦怠期を救ったのは、空気を読まずにのこのこ出てきたロンゲのにーちゃんでした。
とにかくアイツのロンゲとせっきょーは長くてウザい、という一点のみで合意を見た三人の心の絆はしっかと結び直されました。
いまではまうんとふじのペナント製作の下請けなんぞを細々やって、かつながらもそれなりにたのしく暮らしているそうな、おしまい♪
静かな声で先生が訊ねました。かぐずきんはティヘっ☆と舌を出しました。にっこり笑って先生が言いました。
「反省文、100枚書き終えるまで断食です」
「ええーーーーっ!!!」
当然ながらかぐずきんは猛抗議しました。ですがどんなにブータレたところで、先生の厳しい裁定は覆りませんでした。
――もう決して、他人の所有物を断りもなく腹に収めたり致しません、かぐずきんはしくしくしながら反省文を書き上げました。
かすていらとかるぺす勝手に食っちまったことに関してはこうしてがっつり怒られましたが、いっぱい摘んでいった花の方は先生も喜んでくれました。先生の標本作りをいそいそ手伝っているおおかみを、反省文書きながら横目に見つつ、だけどやっぱり何だかなー、いまいち釈然としないかぐずきんなのでした。おしまい♪
【10】かぐらひめ
昔々あるところに、その日暮らしの貧しいおじいさんとおばあさんがいました。
空きっ腹を満たすため、元メガネ少年のおじいさんは裏山へたけのこ堀りに出かけました。ですがその日に限ってめぼしい場所はあらかた掘り返されてしまっていました。家から担いできたしょいこの中は空っぽのままです。おじいさんはがっくりきました。
このまま手ぶらで帰ったら、またあのどえすの天パばーさんにネチネチ精神的にイビられるんだろうなァ、ボクはいたってノーマルだからなじられたってたのしくもなんともないよ、おじいさんはそんなフツーのことを思ってぶつぶつぼやきながら山を下りるしたくにかかろうとしていました。
と、目の前に、黄金色に光輝く一本の竹がぬうっと生えておりました。
「!」
こりゃただごとでないぞ、おじいさんは飛びつきました。たけのこ掘り用の道具しか持ってきていなかったので、竹を割って中身を確かめようにもなかなか作業がはかどりません。振り下ろす唐鍬が滑って、気持ちばかりが焦ります。そのときでした。
――スパーーーン!!!!
自ら手刀で竹を割って、竹の中からメンマの妖精みたいなチャイナ風の衣装を着た女の子が飛び出してきました。
「!!!」
びっくらこいたおじいさんは腰を抜かしてしまいました。すっくと立ったおだんご頭の女の子が、開口一番、言いました。
「おなかすいた」
「……」
おじいさんはアワアワするばかりでまともに口もきけません。少女はひょいとおじいさんの首根っこを掴み、脇に置いてあったしょいこの中に放り込んで言いました。
「家、どっちアルか?」
「……、」
逆らったらどんなひどい目に遭うか、おじいさんは震える指でふもとの方を指しました。おじいさん入りのしょいこを背負った少女はカンフーシューズのつま先を蹴り、ばびゅんと駆け出しました。しょいこの中で猛烈な風圧に耐えながら、おじいさんは生きた心地がしませんでした。
目指すふもとのすだれ屋根の家に着き、少女がガラリと戸を開けました。
いままさにばーさんがぶあつく切ったようかんを大口にあーんと放り込まんとしているところでした。
「!!」
ばーさんはものすごい勢いでようかんを後ろに隠しました。
「なっ、ナンだダレだおまえ、」
精一杯の虚勢を張ってばーさんが言いました。
「……ひんそーな家アル」
ばーさんの問いには答えず、背中のしょいこをドンと土間に下ろすと、少女は眉を顰めました。
「すっ、すみません……」
おじいさんはしょいこのふちに捕まって小さな声で詫びました。
「って、何謝ってんだよっ」
立ち上がってばーさんがキレました。
「いきなり人ン家開けてしみったれてるだなんだ、ヒジョーシキなのはこいつの方だろがっ」
「すっ、すみません……」
おじいさんはますます小さくなってしょいこの中に首を引っ込めました。ばーさんはイラッときました。気持ちを落ち着けるために、隠したようかんをひときれ放り込んでムグムグしました。口中に広がる控えめな甘さが、凝り固まった心の筋をほぐしました。
「えー自分ばっかりー、」
少女が不服の表情で訴えました。ほんのちょびっと、心にゆとりができたばーさんは、しぶしぶながらも残りのようかんをひときれずつ、少女とじーさんにわけてやりました。
いろりばたで三人でようかん食ってお茶飲んで、軽く世間話してしみじみしたら、さっきまでのギスギスした空気はすっかり和みました。つくづくお茶とお茶菓子の効果は絶大です。
「……ひんそーっていうのは、こぢんまりしたいいお家ですねって意味アル」
出がらしのお茶をすすりながら、少女がぼさつ顔で言いました。
「こんどこくごドリル拾ってきてやるから、もーちょっとモノの言い方べんきょーすんだぞ、」
同じく地蔵顔のばーさんが言いました。
「でも、本当言うとボクもね、この家は実用第一でケレン味が足りないなぁと思ってたんです」
――今度屋根に竹細工の金のしゃちほこでも乗せてみようかな、おじいさんが真面目な顔で言いました。ってソレおもっきりパクリやないかーいっ!! 三人で同時にツッコんで、場はどっとわきました。
てなカンジにすったもんだありつつすっかり意気投合した三人は、どーすればこのしみったれた家を金銀財宝で埋め尽くせるか相談を始めました。
文字通り竹から生まれた少女をイタではないガチ設定の地下アイドルとして売り出そうと試みたり、ありがたい不老不死の薬というふれこみですこんぶ工場からタダでもらってきたすこんぶの粉をけんこうブームのバナナやら納豆やらと抱き合わせて叩き売りしてみたり、ついにはアナタのイメージで詩を書きます!おじいさんが路上で一行詩人してみたり、ばーさんが辻であてずっぽうの天パうらない始めてみたりと、思いつく限りいろいろやってみたのですが、いまいちどれもパッとしませんでした。
行き詰まるビジネス展開、三人の関係はまたギスギスしてきました。今では誰も互いの目を見て会話することすらしようとしません。
こんなときに、外部から共通の敵でも現われてくれればかつての団結も取り戻せるのでしょうが、物語がそう都合よく……ありましたありました、彼らの倦怠期を救ったのは、空気を読まずにのこのこ出てきたロンゲのにーちゃんでした。
とにかくアイツのロンゲとせっきょーは長くてウザい、という一点のみで合意を見た三人の心の絆はしっかと結び直されました。
いまではまうんとふじのペナント製作の下請けなんぞを細々やって、かつながらもそれなりにたのしく暮らしているそうな、おしまい♪
作品名:かぐたんのぷちぷち☆ふぁんたじぃ劇場Q2 作家名:みっふー♪