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かぐたんのぷちぷち☆ふぁんたじぃ劇場Q2

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【13】QAIDAN

ろんぐろんぐあごー、風のぬるい夜のことでした。ぽっかり空に浮かんだ黄味色の月も、おぼろの傘をかぶっています。
少年は握り締めた小銭を手に、ひとり夜道を駆けていました。
ウチの先生のあっさり精進メニューに付き合ってちゃ、育ち盛りの胃袋は到底満足できません。昼間の授業をサボタージュして、川ざらいでせしめた小銭を手に屋敷を抜け出し、屋台の夜鳴きそばをがっつくのがこのところ天パ少年のひそかな楽しみでした。
――ゴーン、時を告げる鐘が響く寺通りの界隈で、少年は足取りも軽くそばつゆ風味の年季の染みた見慣れたのれんをくぐりました。
「くっださっいなっ!」
――ちゃりんちゃりんちゃりーん、数えた小銭を台に置き、少年はほくほく座席に着きました。箸を割りながらふと隣の席に目をやりますと、
(……。)
どーにも見覚えのある黒髪おかっぱ少年が、無心にずぞぞぞそばをすすっていました。
――……見なかったことにしよう、ウン、
この至近距離で少々無理があるかと思われましたが、即断で方針を固めた少年はクイックレスポンスで出てきた目の前のそばにだけ集中しました。
「ごちそうさまでした!」
箸を置いたおかっぱ少年が立ち上がりました。天パ少年は丼を抱えて顔を隠し、ネギだくつゆの喉越しをごきゅごきゅ堪能しているポーズを取りました。
「ありがとうございました」
(……?)
――……あれっ? いつもダミ声のおっちゃんなのにな、静かに頭を下げたほっかむりのにーさんの涼やかな声を耳にして、少年はややふしんに思いました。
「……っと、ときににーさん、いまなんどきだい?」
のれんをくぐりかけて、思い出したように立ち止まったおかっぱ少年がキメ顔に振り返って言いました。
(……。)
――つかさっき裏で寺の鐘鳴ってただろが、いーからさっさと帰れよツユがぬるくなっちまうだろ、天パ少年は心の中で悪態をつきました。
「か……、お客さん、そりゃ私に小銭数えさせる段取りで使うワザですよ」
――てゆーかそもそも君は根本的にお話を間違えています、物腰柔らかな屋台のにーさんが、おかっぱ少年を諭すように言いました。
「あれっ? そーだったっけ?」
――こないだ現代文のじかんにならったとおもったんだけどなー、おかっぱ少年はしきりにブツブツ首をひねりながら店を出て行きました。
「……」
ソバ屋のにーちゃんは屋台骨に手をついてがっくり頭を垂れています。ほぼ行きずりの他人をこうも脱力させるとは、ーー……相変わらず抜けたヤローだ、天パ少年は思いました。
ともかくも、これでようやっと落ち着いてそばをたぐることができます。今日は手持ちにゆとりがあったので替え玉も注文しました。さーびすの揚げ玉もどっちゃりブチ込んだ丼の中身をすっかり空にして、心も胃袋も満ち足りた気持ちで少年は箸を置きました。
「ごっそさんしたっ!」
店を出ようとした少年に、後ろからにーさんが声を掛けました。
「……気を付けてください、今夜みたいに湿度を帯びた生暖かい南風が吹くときは梅雨の前触れ……じゃなくて、予期せぬことが起こるものです」
「えっ?」
何の気なしに振り向いた少年はその場にぎゃあと腰を抜かしました。
「!!!」
なんと、にーさんがするりと取った手ぬぐいの下から現れたのは……、目線のところが少年Aみたくなってる先生の顔でした。
(……。)
――まーな、実際実物見たことないもんな、少し冷静になってみれば何のことはない、この現象はミステリーでもホラーでもありませんでした。少年は尻餅をついた着物の泥を払ってよたよた立ち上がりました。
「……まったく、君も木圭くんもこんなところで夜更かししてたんですね、」
――だから昼間授業に身が入らないんです、良かった、今日は堂々と昼寝してる子がいないなーと思ったら、そもそも君は教室にいないし、……木圭くんは……、真ん前でスゴイ真剣に話聞いてる(よーに見える)姿勢は買うけど、あの通り右から左だし……。
(……。)
――私の教え方が悪いんでしょうか、肩を落とす先生があんまり悲しそうなので、さすがの天パ少年も少々申し訳なく思いました。なのでその日は借り物の屋台の片付けを真面目に手伝い、次の日はサボらないでちゃんと授業に出ました。つって出るだけ出てはみたものの、やはり育ち盛りの容赦なき睡魔には勝てず、午後いっぱいウトウト舟を漕いでいる始末でした。
放課後、天パ少年は提出する反省文の中で思い切って晩飯の献立について意見してみました。先生はちゃんと筋道立てればわかってくれる人なので、なるほどと納得してくれました。
だけどこれはこれで別の意見書として出すべきだ、うたた寝の反省文に盛り込む内容ではありません、結果新たな反省文が一式追加されました。
(……。)
――先生、SENSEIのSはもしかして“えす”ですか、少年はしくしくしながらカサの増した反省文を書き上げました。
育ち盛りの晩御飯事情はこうして改善されましたが、多少夜更かしをなくしたところで午後の授業がどーやったって無双のお昼寝タイムであることに変わりはなく、天パ少年は今日も今日とて机に突っ伏して平和にスピスピ鼻ちょーちんを吹いていました。
「……」
100回のうち99回までは比較的温厚な先生の堪忍袋もリミット1、ここらが我慢の限界でしたとさ、くわばらくわばら♪