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それはまるで木漏れ日のように

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【ガシィッ】



「何ィッ!?」
「こいつ・・・受け止めやがった!
餓鬼のくせにどこにそんな力が・・・」

「・・・僕のせいだ・・・
僕が変なプライドを貫いていたからルキの大切なものも護れず、怪我まで・・・
・・・あぁ、そういう風に言ったらまたテリアモンに怒られちゃうな。
僕は僕にしかできないことを全力でやる。
今ルキを護れるのは僕だけだ・・・。今は僕がやらなくちゃ・・・!
きっとテリアモンなら、そう言うと思うから・・・」

 ひたすら一人で呟いたあと、健良は男達のほうへ向き直った。
 男達を見る健良の目は鋭かった。




 彼のあんなに怒った顔は誰もが初めて見る――――・・・





「な、何をわけわかんねーことを・・・
・・・お前ら怯むな!!全員殺せェ!!!!!」



























・・・そこから先のことは、留姫もよく覚えていない。

覚えているのは、大人げない男達が全員でナイフを持って健良に飛び掛ってきたこと。
それを健良はいつの間にか全員気絶させてしまったことだ。




「(ジェンって・・・本当にカンフー強かったんだ・・・)」

 啓人からすごいすごいと聞いてはいたものの、
普段の温厚な健良からは完全体のデジモンを素手で倒せるほどの格闘技術なんてイメージすら湧かなかったのだ。




















 結局、男達は警察に捕まった。



 途中、「小学生だなんて詐欺だ」などと口々に呟いていたそうだが気にしないことにした。

 健良の顔や体には無数の打撲や切り傷があり警察は心配していたが、本人は笑顔でかわしていた。







「ジェン・・・」
「何?」
「さっきは・・・その・・・ありがとう・・・
・・・それから・・・」

【~♪】

「あ、ルキ、電話鳴ってるよ」
「あ・・・・・・【ピッ】もしもし、タカト?何よさっきから何度も電話してきて・・・
もう着信履歴がアンタばっかで気持ち悪・・・
・・・は?ジェン?・・・別に・・・いないけど・・・・・・」
「? タカト何だって?」
 
健良が横から口を出してきたので、留姫は慌てて健良から遠ざかる。

「ちょ、ちょっとジェン!!」
「え?」
『何、ジェンいるのー?
ルキ、ちょっとジェンと変わってくれない?』

 留姫は無言で健良に携帯電話を手渡した。

「(ルキちょっと怒ってる・・・?)
・・・僕だよ。どうしたのタカト?」
『どうしたのじゃないよ!
家にも電話してたのに出ないし、ジェン携帯持ってないからどうしようかと思ったよ!』
「何、そんなに大事な用なの?」

 きょとんとする健良。電話の向こうで何故か沈黙が続く。

『・・・何言ってるのジェン・・・今日、何の日か忘れちゃったの?』
「・・・今日?」

 健良は耳から携帯を離し、画面に表示されている日付を確認した。

「・・・あ、そっか」
『え!?ホントに忘れてたの!!?






 今日はジェンの誕生日じゃないか!!!』



 電話の向こうからタカトの溜息と大勢の人間の笑い声が聞こえる。

『せっかく皆でジェンの誕生日パーティしようって僕の家で準備してたのに本人が忘れてるなんて・・・』
「アハハ、ゴメンゴメン」
『とにかく、今すぐルキも一緒に僕の家に来てね!皆待ってるんだから!』

【プツンッ・・・ツー、ツー、ツー・・・】

 ・・・これでようやく全てのつじつまが合った。
 今朝から変に上機嫌だった小春。
 そしてずっと気になっていた、留姫の「気づいてないの?」発言。
 これは今日が自分の誕生日だという事実についてだったのか・・・







 健良は床でバラバラになってしまったグラスを見る。

「・・・じゃあひょっとしてこのグラス・・・」
「! な、何よ・・・アタシがジェンの誕生日プレゼント用意したらいけないってわけ?大体―――・・・」




「ありがとう」



「べ、べッ、別にお礼なんて・・・・・・それに・・・もう壊れちゃったし・・・」
「いいよ。これは僕が貰うから」
「何、同情でもするっていうの!?アタシはそういうのが一番・・・」
「同情なんかじゃない。本当に嬉しいんだ。
ルキ・・・ありがとう!」

そう言って屈託のない笑顔を見せる健良。

「~~っ!
・・・どう・・・いたしまして・・・」







(ジェンって・・・ズルイ・・・)