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ぐらにる 流れ2

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 本名は、組織では使わない。全てがコードネームで登録される。ロックオン・ストラトスという名前で、何年も過ごしているから、ふと、自分の本当の名前とか誕生日すら忘れそうになる。そんな生活だから、この非常識な自己中を羨ましいとも思った。
「どうしたんだ? 姫。疲れているのか? 」
 ぼおっと自分の考えに沈んでいたら、目の前で、ひらひらと手を振られた。ああ、まだ食事の最中だったか、と、意識を戻したら、心配そうな顔がある。
「何かあったのか? 」
「いいや、こんなバカ騒ぎして食事させたのは久しぶりだと思っただけだ。」
「普段は、一人なのか? 」
「うーん、一人ではないんだが・・・・あんたみたいに、支離滅裂なことを言いながら食事するようなヤツはいないな。」
 だいたいは、俺が喋り倒していることが多い。それにアレルヤが絡んでいるだけで、あとの二人は、相槌すら打たないことも多い。なるべく、食事くらいは会話しようと勧めているのだが、なかなか、これがうまくいかない。無口なのが二人もいるから、どうしても、静かだ。それに、俺が聞き役をすることなんて、あまりない。いつもとは逆の役回りをしているのが、ちょっと楽しい。

・・・だが、相手はユニオンの軍人で、また敵になる相手だ・・・・

 油断してはいけない。余計なことも話せない。だから、聞き役になるのかもしれない。俺は、ある企業から秘密裏に新しいシステムを学ぶために出向させられたSEだ。ただのオフィシャルワーカーなんだ、と、肝に銘じて、食事に戻った。



 ドタバタとした週末になったな、と、週明けの朝に目を覚ました。土曜日は、ひとりで語り倒したエーカーに付き合っていたら、結局、彼は帰りそびれてしまい、そのまま、日曜の夜まで滞在してしまったからだ。別に相手をした覚えはないが、こちらが家事をしているのを、物珍しそうに眺めていた。
 同じように一ヶ月限定生活をしているはずの彼は、洗濯物を干している俺を、しげしげと眺めて、「いい光景だなあ。」 と、よくわからない感想を漏らした。あんたは、洗濯とかしないのか? と、尋ねたら、即答で、しない、と、返って来た。
「じゃあ、どうしているんだ? 」
「ホテルのランドリーへ出している。着替えは全部、そうしているが、何か? 」
「はあー金持ちなんだなあー。俺には、もったいなくて、できないぜ。」
「時間を買うと思えばいい。きみがやっている労働の時間を金で買い取るとだな、それだけ自由時間が増える。」
「・・・それで、その時間で、俺んとこで、ぐたぐだと管巻いてるって、どうなんだ? エーカー。その時間を有効に使えよ。」
「有効に利用している。姫の日常を観察中だ。」
「はあ? 日常? あんたが金でやってもらってることを、しがないSEの俺は自力でやってるだけだぜ? 」
「だが、手慣れているし楽しそうだ。こんなことを、そんなふうに楽しそうにできるきみを尊敬するよ、姫。用意してくれる食事も、どれもうまいしな。いつも休日は、こういう過ごし方なのか? 」
「休日じゃなくても、こんなだよ。」
「休日に特別やることはないのか? 例えば、教会に行くとか、買い物に行くとか、そういうことは? 」
「そんな敬虔なクリスチャンじゃないしなあ。もう何年も行ってないな。買出しはするが、買い物はあまり行かないな。あんたこそ、休日は? 」
「惰眠を貪るに尽きる。」
「悲しい休日だな。」
「そうかな。休日くらいしか、ゆっくりできないんだから、それでいいんじゃないのか? 日々、地上訓練と実地訓練に明け暮れているからな。それに、その間隙を突いて、会議にも出席しなきゃならないし、書類も作成しなきゃならない。毎日、忙しすぎて、目が回りそうなんだぞ? 姫のような優雅な休日なんてものは、私には皆無だ。」
「優雅? ははははは・・・・洗濯物干しているのが優雅? そういうもんかなあ。」
「そういうものさ。きみの姿で癒されている人間が、ここにいる。」
 本当に、よくわからないが、それなりに満足はしたらしい。金曜日の夜のことなんて、すっかりと忘却している。さすがに、日曜の夜は早めに叩き出したものの、本日だって、結局、研究施設で顔を合わせているわけで、ほとんど、毎日、一緒に居るようなものだ。同じカリキュラムをこなしているから、同じように行動することになるし、昼飯は施設のカフェテリアだから、これも一緒、帰りも一緒だ。その間、ずっと、エーカーは、くっちゃべっているわけで、普段、俺は刹那と居る時は、こういうことをしているのだろうか、と、ちょっと反省した。これは、かなり煩いはずだ。




 毎日、おごられるのは勘弁して欲しいと、水曜日に自炊したものを食わせたら、そのまんま、泊まっていきやがった。ワンルームで、ベッドはひとつなのだが、大きなソファがある。その日の話題は、子供時代の遊びで、気をつけて喋っていて、俺としては疲れた。英国と同じではあるのだが、俺の故郷には、故郷ならではの祭りとか遊びがある。それらを口にしないように気をつけていた。
 そんなことをしたからだろう。夢で、過去のトラウマを思いっきり再現された。目の前に広がるいつもの場所の、いつもとは違う光景に、叫びそうになった。忘れたいのだが、忘れたくない光景だ。

・・・・なぜ、あの時、一緒に行かなかったんだろう。そうすれば、こんなところにいることもなかったのに・・・・

 延々と広がる黒いシートの列。瓦礫と化した、いつもの公園。子供だった俺には、どうすることもできなかった。突然に奪われることに驚いて、満足に口も利けなかった。それらを再生される度に、憤る気持ちが溢れて、今の自分の立場を確認する。
 いつもは、ハロが気配で察知して、俺を叩き起こしてくれる。今は、ハロがいない。朝まで、延々と、この光景がエンドレスで広がるのだろうと諦めていたら、ふいに身体を揺すられた。
「おいっっ、姫っっ。」

・・・あ・・・・

 飛び起きたら、薄暗い中に人影があった。身体が震えて、思うように声にならない。肩に置かれている手が、それを感じると、ゆっくりと抱き込まれた。
「・・・・落ち着いて。それは、全て夢だ。」
 静かな声が耳元に聞こえる。

・・・・夢じゃない・・・・あれは、現実にあったことだ・・・・・

 理不尽に全てを変えられた瞬間だった。気が緩むと見る夢。それを見ることで、今の自分を再確認させられる。あの瞬間があったから、今の自分はある。マイスターになることを受けたのも、二度と大切なものを亡くしたくないからだ。

・・・いや、もう、作らないけど・・・・

 一瞬でなかったものになる恐怖が、今だに、尾を引いていて、大切なものは作らなくなった。確かに、マイスター同士として大切だと感じているし、それを庇うこともした。だが、最後の最後で完全に受け入れているわけではない。刹那の隠れ家に転がり込まなかったのも、それが理由だ。

・・・・いつまでたっても、キツいな・・・・
作品名:ぐらにる 流れ2 作家名:篠義