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きみといきて、きみといきして

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「俺の一生分の恋、みーくんにあげる」

帝人が臨也に告白して、臨也が帝人に告白をして、それから大分時間が経った。
互いの想いを知ってからは、臨也は今まで以上に頻繁に病室に来ては、帝人の傍で過ごすようになった。
帝人の両親は仕事で忙しく、また兄弟もいないため、帝人は本当に嬉しく思っていた。
臨也と想いが通じたのも、そして臨也からまた「みーくん」と呼ばれるようになったことも。

しかし、時間だけは確実に過ぎていく。帝人の病気も、進行している。
以前は何とか自力で起き上がることが出来たが、今では誰かに支えてもらわないとそれさえも叶わない。
御飯もまともに食べられず、無理して食べると吐いてしまうことも度々だった。

それでも、帝人は臨也の前だけは笑っていた。どんなに苦しい時も、辛い時も。
好きな人の前では、笑顔でいたいから。そんな弱いところを見せたくないという、精一杯の幼い意地で耐えた。
臨也は既に、全部見抜いているかもしれないが。
何故なら帝人が少しきつさを感じてくると、さり気なく細い身体をベッドに寝かせ、細かく声をかけてくれるからだ。
帝人は臨也の優しさを嬉しく感じるとともに、どうしようもないくらいに申し訳なくなった。



「……みーくん、どうかした?気分、悪い?」

黙ってしまった帝人を不安に思ったのか、臨也が首を傾げながら髪を撫でていた手を頬にずらした。
くすぐったいよ、いざにい。そう言おうとしたがそれは声にならず、掠れた息となって口から漏れるだけに終わる。
それにまた臨也は不安を募らせて、「みーくん?」と優しく訊ねた。

(僕が、こんなんじゃなければ)

迷惑を掛けることも、ないのに。
そう思っても口にすることは無い。以前似たようなことを口にしたら、酷く臨也が怒ったからだ。
滅多に帝人に対して怒ることはしない臨也であるが、以前帝人が臨也を怒らせてしまった時、あまりの怖さに思わず帝人が泣いてしまうほどだった。
後から我に返った臨也が必死に帝人を宥めて、何とか落ち着きを取り戻したものの、暫く臨也にびくびくしていたのは記憶に新しい。

「何でも、ないですよ」
「本当?」
「はい、ただちょっと…眠くなっただけです」

眠くなったのは本当、臨也が来る前に飲んだ薬のせいだろう。少し疑っていたようだったが、臨也は「そっか」と優しく笑うと、帝人から手を離した。
それが少しだけ寂しく感じたのは、帝人だけの秘密だ。

「じゃあ俺は帰るね、誕生日までに欲しいものちゃんと考えておくんだよ」
「うん……ね、いざにい」
「んー?」
「……眠るまで、手、繋いでて」

帝人がおずおずと手を差し出すと、臨也は苦笑しながらも帝人の手に自分のそれを重ねる。
触れた温度に安堵して、帝人はほっと息を吐いた。

「何だか今日のみーくんは甘えん坊だね」
「…そんなこと、ないです」
「ちゃんといるよ」

君が眠るまで、ちゃんと。
砂糖菓子のように甘い声を何処か遠くに聞きながら、帝人は眠りについた。