きらきら星 【中編】
12
…やってしまった。
でも、何て言えば良かった?
本当のことは言えやしないのに。
友達としてやっていこうって、友達としてそばにいようって、
それだけで十分だって思おうと頑張ってたのに…
何で踏み込んでこようとするんだよ。
本当のことを言うのが怖くて…踏み込まれるのが怖くて…あんなことしちゃったけど、
「…やり過ぎたかな」
水谷の手を拒絶した右手より、何故か胸がひどく痛んだ。
次の日からオレと水谷の関係は急激に崩れていった。
オレも何となく声がかけられないでいると、向こうもそう思っているのか、
お互いが避けている状態になっていた。
水谷は少し怒っているようにも見えた。
まぁあんなこと言われたなら当たり前か…
「嫌われちゃったかな…」
でも、本当の気持ちを言って気持ち悪いって嫌われるより、
こんな風に喧嘩して嫌われる方がまだマシかな…
ズキズキと頭が痛む。今日は一段と身体がダルかった。
昼休み食欲もないので、ちょっと空気を吸いに行こうと外に出た。
調子が悪い時は、以前水谷が泣かせてくれたベンチに行くようにしていた。
あの時からオレにとっては特別な場所…
ベンチが近づくにつれて、笑い声が聞こえてきた。
嫌な予感がしてそっと覗いてみると、水谷と坂井さんが楽しそうにしゃべっていた。
ズキズキズキ…
「あー頭いてぇ」
オレは天を仰いだ。
今日も清々しいほど真っ青な青空が広がっていた。
練習にも力が入らなかった。
辛い時でも練習だけは頑張れたのに…
身体が思うように動かず、攻守ともにボロボロだった。
「一旦休憩―!!各自水分とってねー!」
モモカンの言葉とほぼ同時にその場にしゃがみ込む。
「ふぅー」
…やばいな、本当に調子が悪いかも。
「おい、栄口大丈夫か?」
巣山の声にビクッとする。
心配させてはいけないと思い、急いで立ち上がると…
グニャリ
視界が歪んだと思うと同時に急に真っ暗になる。
「栄口!!」
意識が遠のいていく中、大好きな声が聞こえた気がした。
遠のいていく背中を必死に追いかける。
(待って。行かないで。)
そばにいるだけでいいんだ。それ以上望まないから。
(神様お願い…連れて行かないで。)
(水谷…ごめん…ごめんね)
作品名:きらきら星 【中編】 作家名:野沢 菜葉