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野沢 菜葉
野沢 菜葉
novelistID. 23587
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きらきら星 【中編】

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14
「――そしたらさぁ、姉ちゃんが録画する時チャンネル間違えてたっぽくてさぁ。」
「楽しみにしてた番組取り損ねちゃったんだ?」
「そうなの~!もう本当にショック~!!」

そう言っていつものように抱きついてくる水谷。
前のような動揺はないけれど、やっぱりドキドキはおさまらない。

慰めるように頭を撫でてやる。
ふわふわした髪が心地よい。

「その番組さ、オレも見たくて録画して貰ったんだよね。
 だから見終わったら貸すよ?」
「えっ!?やったぁ!!栄口大好き~!」
「わわっ!」わかったから!お前このために1組来たわけじゃないだろ!!
 さっさと彼女のとこ行けって!」
「…はーい。」

渋々とオレから離れた水谷だったが、オレだってこんなこと言いたくないよ。
でも、さっきからチラチラこちらを見て待っている坂井さんのこと考えたらさぁ。

「この間借りたやつ持ってきたよー!ありがとう。」
『えっわざわざありがとう!
 …ねぇ、良かったら今日お昼一緒に食べない?』
「いいよ!じゃあ屋上でも行こっか?」
『うん!』

聞きたくない会話なのに自然と耳が傾く。
こんなときに自分は水谷の1番じゃないんだなって思い知らされる。
…まぁ友達としては1番かもしれないけれど。
幸い、2人が一緒にいても前のように、苦しくてどうしようもない感情が溢れることはなくなった。
少しは成長できたのかなって思う。今はただ悲しい…それだけ。





その日の放課後、もうすぐ練習が始まると言うのに、なかなか水谷が現れない。
なにか用事があるのならともかく、ただの遅刻なら大目玉だ。
少し心配になって教室を見に行こうと部室を出た。

すると、部室棟の裏で何やら話が聞こえた。
それが水谷の声に似ていた気がして、そちらに向かうと、オレの好きな茶色の髪が見えた。

こんなところで何やってんだ?早く着替えないと練習遅れるぞ。
「み―-」
名前を呼ぼうと声を出したその時。
水谷のほかにもう1人の影があることに気付いた。
…そして2つの影が重なっていることも…


「――っ」
オレは見ていられずにその場から逃げだした。
付き合っているならキスなんて当たり前だ。なのに、この絶望感はなんだろう。
やっぱり友達なんかじゃいられない。オレの感情はもう友達には戻ってくれない。

泣きそうなのをグッとこらえて、オレはグラウンドへと駆け出した。








その日の水谷はおかしかった。
オレが目撃した光景と合わせると、もっと花が飛んでてもいいのに、
今の水谷は花を飛ばすどころか、花を成長させる栄養もなさそうだ。
考え込むような、落ち込んでいるような、そんな感じ。

…もしかして、無理やりキスして嫌われちゃったとか?

オレも落ち込みたいのは山々なのだが、どうにも気になってしょうがない。
今日は水谷が部誌担当なのに、さっきからシャーペンをくるくる回して一向に進む気配がない。
そんな調子じゃ明日の朝になっても帰れない…そう思ってオレは水谷に近づいた。

「おい。早くしないと帰れないぞ。」
「うぇ!えっ栄口!?」
そっと話しかけたつもりなのに、予想以上に驚かれたので、逆にこちらがビックリしてしまう。
それでもボーっとオレの顔を見ているので、頭を叩いてやった。

「いってぇ!!栄口ひでーよ!!」
大げさに言うので笑いが込み上げてくる。

「水谷なんかあったの?」
さりげなく聞いてみたけど、本当は気になってしょうがない。
なんで元気ないの?嬉しいことあったんじゃないの??

「えっ何で?」
「なんか落ち込んでるみたいだったから…。言いたくないならいいんだけど、オレはいつも水谷に助けられてるからさ。」
「…栄口は俺が1番?」
「へっ?」
なんだってこう、こいつはオレが予想していないことを言うのだろう。
だけど、こう期待した目で見られるとなぁ…

「…1番だよ!!」
乱暴にそう言うと、水谷は驚いたようにオレを見ている。
言わせたくせにその態度ってあり!?

文句の1つでも言おうと口を開けようとすると同時に、腕をグイッと引っ張られた。
「!?」
突然のことでバランスを崩すと、それを見計らったように、水谷はオレを支え…







オレの唇に自分の唇を合わせてきた


「…っ」
甘い感覚に身体がとろけてしまいそうになる。
こんな時に何故か思い出す過去の記憶…
(前から思ってたんだけどさぁ、栄口と坂井さんって似てるよね?)
それと同時に練習前に見た映像が重なった…



ドンッ




オレは思いっきり水谷を突き飛ばした。
水谷は背中を打ったらしく、顔を歪めている。
こんなの違う…こんなのまるで…
「オレを彼女の変わりにするのはやめろ!!」
「…」
「オレは坂井さんなんかじゃない!!」







自転車をもうスピードでこぐ。
あぁそういえば、水谷のこと好きって気付いた時もこんな感じだった。

「…うっ…うぅ」
自転車をこいでるのに涙なんて流れるから余計苦しい。

やっぱりもう止めたいよ。もう苦しいよ…。
だって欲しいんだ。キスなんかされて、もっと、もっと水谷を求めちゃう。

ふと自転車を止めて空を仰ぐと、星がきらりと流れた。
「流れ星に3回願い事を言うと叶う」
なんて誰が言い出したんだろう。

だけど、流れ星は速すぎて…その流れに見とれて…願い事を3回言える人はいるのだろうか。
届かない水谷への願いは、まるで流れ星のようだった。